変わりゆく「出会い」のカタチ

まず、結婚相手との出会いの変化について見ていきたいと思います。大きな変化は、近年「婚活サービス」を利用して出会うカップルが増えていることです。
リクルートブライダル総研の「婚活実態調査2019」によると、2018年の婚姻者のうち婚活サービスで出会った人の割合は12.7%と過去最高を記録しました。5年前の2013年は4.7%だったので、3倍に増えたことになります。
婚活サービスとは、主に「結婚相談所」「ネット系婚活サービス」「婚活パーティ・イベント」に分類されるもの。それぞれ経験者の割合は、「結婚相談所」=5.5%、「ネット系婚活サービス」=16.5%、「婚活パーティ・イベント」=9.2%となっています。最も多いのはネット系婚活サービスで、これは主に「婚活アプリ」を指します。ほかの婚活サービスは横ばいなのに対して、2016年の9.8%から大きく数字を伸ばしています。
アプリはスマホにダウンロードするだけで手軽に始められます。また、最近では「ハイスペック限定」「恋人探し」「結婚相手探し」など、種類が豊富でアプリによって特色がはっきり分かれています。周囲に利用者が増えたことで体験談を聞く機会も多くなり、それまで知らない人と会うことに不安を感じていた人も、一歩を踏み出せるようになったのかもしれません。
また、同調査では結婚には至らなかったものの一度は婚活サービスを利用したことがある人は、32.3%でした。婚活サービスを利用するハードルはどんどん下がっているようです。
筆者自身も、フリーランスのライターとして仕事をするなかで、これらの変化を実際に感じることがあります。例えば、新郎新婦が結婚式でゲストに配る席次表のパンフレットに掲載するインタビューを書かせていただくときです。

結婚を控えたカップルに出会いについての質問をすると、数年前までは「知り合いの紹介」という回答が多く、それはいわゆる合コンを指すことが大半ですが、あまりそのことに触れてほしくないという方が多かったため、記事では「知人の紹介で出会ったふたり」などと書いていました。
しかし今は、「お見合いアプリで出会いました」「結婚相談所に登録して出会いました」というカップルが増えてきました。「これを書いて大丈夫ですか?」と確認しても、「みんなに話しているので、全然問題ないです!」と言う方が多くいらっしゃいます。
昔のように仲人や世話焼きな人が周りにいなくなった分、今はITが出会いを手助けしてくれているのですね。
アプリや結婚相談所で出会ったカップルは、雰囲気が似ていて一緒にいてすごく自然なふたりだなと感じることが多くあります。事前に相手に求めることや自分の趣味などによって条件を絞っているため、お互いにマッチした人に出会いやすいのかもしれません。
結婚式を機に「これまでの人生を振り返る」
もう一つ注目したいのが、結婚式に対する考え方です。一昔前までは、結婚すれば結婚式をするのは当たり前で、格式高いホテルで新郎新婦はゲストより一段高い高砂席に座って結婚披露宴を行うのが通例となっていました。今では考えられないかもしれませんが、芸能人がゴンドラに乗って豪華な結婚式をする様子がテレビで生中継されるようなこともありました。
そういった時代の後、1997年に結婚した歌手の安室奈美恵さんが結婚式を実施しなかったことが一つの契機となりました。芸能人の結婚がトレンドに影響を与えることもあり、その後しばらくは結婚式をしない、あるいはお金をかけない「地味婚」が流行します。
それから、リーマン・ショックや大震災を経て、アットホームでゲストや家族とのつながりを大切にする結婚式が多く行われるようになりました。
リクルートゼクシィが毎年発表している「結婚トレンド調査2019」では、結婚式に対する考え方として「結婚式は列席者に感謝の気持ちを伝える場だ」という質問に対して、93.3%がそう思うと答えています。この質問に対しては、2013年の調査以降、そう思うと答えた人の割合は90%以上を維持し続けています。「新郎新婦が主役」だった従来の結婚式から、「ゲストが主役」の結婚式への変化が定着していることが分かります。
また、「結婚式は人生を振り返り、自分の生き方を再認識する場だ」という質問に対し、そう思うと答えた人は2013年の60.3%から、2019年は67.6%に増えています。
つまり、これまでふたりがどんな場所で育ち、どんな人と出会って今に至るのか、結婚式をきっかけに考える人が増えているということになります。
結婚式も「ふたりらしさ」がトレンド
この流れから、結婚式はより「ふたりらしさ」を出すためのオリジナル性が増してきているといえそうです。従来のように似たような会場で誰もが同じ演出をするのではなく、ふたりの好きな場所で、オリジナルの演出をする人が増えています。
筆者が話を聞いたなかでも、宇宙が好きな新郎新婦がブーケトスの代わりに火星や地球に見立てたボールを投げたり、好きなブランドの世界観を表したウェディングケーキを特別に作ったりしているカップルがいました。自分たちが大事にしてきたものでゲストをおもてなししたいと考えている人が増えているように感じます。
また、婚姻届もオリジナルのデザインが選べることをご存知でしょうか?
役所でもらう定型の用紙だけでなく、各自治体のウェブサイトから無料でダウンロードできるオリジナルの「ご当地婚姻届」や、キャラクターの婚姻届、自分たちの写真を入れるなどして世界に一つだけの婚姻届を作るサービスまであります。

価値観が多様化した時代、今後結婚はますますふたりらしく、個別化したものになっていくのではないでしょうか。
ライタープロフィール

1980年福岡県北九州市生まれ。同志社大学文学部を卒業後、9年間株式会社リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。ブライダル情報誌『ゼクシィ』の制作に携わり、主にプロジェクトマネジメントを担当。2011年3月末に退職、フリーに。
『日経ビジネス電子版』『妊活たまごクラブ』などで記事執筆中。
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