おうち時間で世界中の講義が受講できるMOOC(ムーク)とは?

おうち時間で世界中の講義が受講できるMOOC(ムーク)とは?

おうち時間で世界中の講義が受講できるMOOC(ムーク)とは?

コロナ禍で注目を集めるMOOC(ムーク)とは、無料または低額で受けられる、世界の大学・大学院レベルのオンライン講座のこと。今回は、京都大学で遠隔教育を10年以上研究する田口真奈さんに、MOOCの学習方法や活用する意義についてお伺いしました。

MOOCとは?

MOOCとは?

MOOCとは、「Massive Open Online Course」の略称で、直訳すると「大規模に開かれたオンラインの講義」という意味です。2012年にアメリカの複数の大学でMOOCのサービスが立ちあがったことから、その年は「MOOC元年」と呼ばれています。

具体的には、ウェブサイト(プラットフォーム)を利用して、オンラインで大学などの高等教育機関の講義を受けることができる仕組みのことです。一定の成績を満たした受講者は、修了証を受け取ることも可能です(修了証の発行にお金が必要なこともあります)。

講義を提供する有名なサービスとしては、英語圏では「edX(エデックス)」「Coursera(コーセラ)」、日本では「JMOOC(ジェイムーク)」などがあり、JMOOCには2022年4月時点で、計536講座が公開されています。

2013年には東京大学や京都大学もMOOCに参加し、以降は多くの大学で活用されています。

オンライン授業の発展とMOOC

インターネットを利用し、オンラインで受講する遠隔教育の手段の一つである「eラーニング」は2000年頃からアメリカで盛んになり、日本でも研究や活用が進みました。

初期の「eラーニング」は、ウェブページに載せられた教材を一人で学ぶ形式のものでしたが、現在ではICT(情報通信技術)の進化でリアルタイムの動画配信も可能となっています。こうしたICTの進展により提供できる遠隔教育のスタイルが増える中で、登場した一つの形がMOOCです。

2020年には、新型コロナウイルス感染症の影響でMOOCの受講者数は増加しました。この年の全世界におけるMOOCプラットフォーム登録者数は約1億8,000万人にのぼり、そのうち2020年における新規登録者数は約6,000万人と、全体のおよそ3分の1の登録者がこの年にMOOCを始めたことになります。

その大きな要因は、大学でのオンライン授業が定着し、オンラインで学ぶことへのハードルが下がったことにより、学習機会を求めていた人にMOOCという学習方法が広まったことと考えられています。登録者が急増した2020年を「MOOC第2の年」と呼ぶ人もいます。

MOOCのメリット

MOOCのメリット

MOOCは世界規模で講座を受講できるため、学習意欲のある人にとっては「世界の知」を吸収できることが大きな魅力です。

MOOCはインターネット環境さえあれば場所を問わず誰でも学習できることはもちろん、世界トップクラスの教育機関の講義を費用を抑えて受講でき、修了時に修了証がもらえるといったメリットがあります。MOOCのメリットについて詳しく見ていきましょう。

年齢を問わず誰でも学べる

大学の講義を受けるためにはその大学の入学試験に合格する必要がありますが、MOOCは一部の受講前提条件などが定められている講義を除き、インターネット環境があれば年齢や地理的制約なしに学習することが可能です。

京都大学では、2018年からオンラインで高校生向けの講座を公開しています。もともとは、オープンキャンパス(高校生が受ける体験授業)に参加できなかった人のために開設されたものですが、受講資格を設けていないため、60代以上の受講者も予想外に多く、幅広い年代の方が受講しているそうです。

動画としてもクオリティが高い

例えば京都大学では、多くの専門のスタッフがMOOCの動画制作に携わっています。大学の講師は専門分野の知識はありますが、メディア制作に関してはプロではないため、専門のスタッフにアドバイスをもらいながら制作しています。

動画制作は、大学の授業のように講師が一人で話す内容をすべて決めるというものではありません。スタッフからの「話し方が分かりづらい」「別の事例が良いのでは」といったアドバイスも内容にいかされています。

また、多くの動画が10〜15分程度の長さに区切られており、視聴しやすいように適切に調整されています。

修了証が得られ、社会的な評価につながる可能性がある

MOOCを受講することで修了証が得られることも、MOOCのメリットの一つといえます。海外ではマサチューセッツ工科大学の正規の修士の単位を取得できるプログラムもあります。また、履歴書などにMOOCでの修了コースなどを記載することが可能です。

日本においても、MOOCでの学習をより社会的な評価につなげていくことがめざされています。修了証は学んだ内容だけでなく、向学心がある、自律的な学習ができるといった、定性的な評価につながる可能性もあるようです。

その他にも、企業が人材育成や採用にあたってMOOCを活用している場合もあり、社内教育の一環として利用できることや、学習者の知的スキルや潜在能力を分析することで優秀な人材を確保できるといったメリットがあります。

MOOCのデメリットはある?

MOOCのデメリットはある?

MOOCも含めた通信教育の独学の学習形態はモチベーションを維持しづらいことや、社会的に認知が広がっていないことに起因するデメリットもあります。MOOCのデメリットについても見ていきましょう。

モチベーションを維持しづらい

「資格を取る」といった明確な目標があれば続けやすいですが、「何となく動画を見る」という場合は継続が難しい傾向があります。

例えば、MOOC同様、無料の教材として活用されることの多いラジオ英会話テキストですが、そのテキストの発行部数が最も多いのは年度替わりの4、5月だそうです。この時期は「新しいコト」への欲求が強く、張り切って始めてみたものの、長続きしない人が多いことがここからも分かるのではないでしょうか。

MOOCには長時間の動画もあり、さらに英語によるコースの場合は、英語での講義に不慣れな人にとっては理解するのにかかる負担がより大きくなります。予習・復習だけでなく小テストなどの課題を解く時間も必要となります。

こうしたハードルを乗り越え継続するためには、仲間の存在や、ゴールを決めたり、ゴールに対するメリットを考えたりすることがポイントになります。

実際、MOOCを受講する動機付けとして「キャリアアップ」といった明確な目的がある人は修了率が高い傾向にあるそうです。もちろん、「学習することが面白い」という内発的動機付けが強い方も修了率は高くなります。

体系的な勉強が難しい

学校や塾といった教育組織はカリキュラムが作られ、学習者が体系的に学べるよう設計されています。

一方、MOOCの講座にはカリキュラムが無いものもあり、学習内容によっては、今の自分に合ったレベルの講座を順序立てて受講する必要があります。コース選択が難しいため、その時点で挫折してしまうケースもあります。

日本では比較的認知度が低く、企業の評価は未知数

就職活動において、MOOCでの学習内容が応募先の企業にとって価値がある場合でも、人事担当者がMOOCを知らないと適切に評価されない可能性があります。

MOOCによる学習の評価を行うのは企業や社会ですが、日本ではまだ社会的な認知度が高くないため、評価されにくいという点が課題です。

MOOCで学び方が変わる?

MOOCで学び方が変わる?

大学の講義においてもMOOCを活用することで、学習方法に工夫がなされています。

MOOCを取り入れた「反転授業」

通常の大学の講義は1コマ90分ですが、多くの場合、知識を伝えることに90分を使い、練習問題は課題として授業時間外に行うことになります。

練習問題を解くという行為は一人でできますが、分からない部分があったときには一人で進めることが難しい場合もあるでしょう。また、せっかく学んだ知識を活用する機会が授業内では十分に確保できない場合もあります。

そこで、MOOCなどを用いて事前に動画で知識を得て、授業中には練習問題を解いて知識を定着させたり、ディスカッションなどで知識を応用する力を身に着けたりする学習方法が「反転授業」です。

反転授業では、知識の伝達を動画の配信で代替します。動画は一時停止したり戻したりできるため、学習者は分からない部分の見直しができるようになり、一人ひとりに合った知識の吸収が可能となります。

また、事前学習を十分に行うことで、練習問題での実践を通してより理解を深めることができます。

MOOCと生涯教育

「MOOC元年」から10年近くの歳月が経過し、これからは個人の学ぶ力や学習意欲がより重要になるといえるでしょう。昨今では、企業が人材を育て終身雇用するという企業ばかりではなくなり、知識もすぐに陳腐化します。受け身の姿勢では人材として通用しにくくなってきていることは確かです。

そのため、「学ぶ力」や「続ける力」を身に付け、MOOCをはじめとして自ら積極的に学びの機会を持ち、生涯学習を続けることが重要です。MOOCは世界規模で学習に活用されており、学習意欲の高い人にとって、より自らの価値を高めていくことが可能なツールであるといえるでしょう。

最後に田口さんは「MOOCは学習方法のオプションであり、MOOCの存在を知ることで学びの可能性は大きく広がります」と教えてくれました。

MOOCは、世界規模で利用者を増やし注目を集めています。いずれMOOCを使うことがあたり前となり、個人で学ぶ力やその学習意欲によって人材としての価値がますます高まる時代がやってくるかもしれません。

この人に聞きました
田口真奈さん
田口真奈さん
大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。現在、京都大学高等教育研究開発推進センター准教授。ICT活用教育に関する論文・書籍を多数執筆し、2020年度日本教育メディア学会論文賞を受賞する。MOOCを始めとしたICTを利用した京都大学の教育コンテンツ情報提供ウェブサイト「CONNECT」の企画・制作・運営にも携わる。専門は、教育工学・大学教育学。
ライタープロフィール
田中 あさみ
田中 あさみ
金融系ライター。大学在学中にFP資格を取得し、卒業後は会社員を経て独立。現在はフリーライターとしてメディアや企業サイトなどで金融系・不動産テック・DXなどの記事を執筆する。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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