インフラ分野のDXでめざす、私たちが暮らしやすい街とは?

インフラ分野のDXでめざす、私たちが暮らしやすい街とは?

インフラ分野のDXでめざす、私たちが暮らしやすい街とは?

国土交通省では2020年7月に「インフラ分野のDX推進本部」を設置。データとデジタル技術を活用し、地域の防災や街づくりのための実証実験が行われています。インフラ分野のDXは私たちの生活をどう変えるのか、国土交通省の施策を基に解説します。

そもそもDXとは何か

そもそもDXとは何か

DXとは

DXは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱され、「デジタルテクノロジーの進化が人々の生活を豊かにしていく」と解釈されることが多いです。

2019年7月に経済産業省が公表した『「DX推進指標」とそのガイダンス 』では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」をDXと定義しています。

また、経済産業省が2018年12月に公表したDX推進ガイドライン ver1.0によると、DXは企業や組織が主体的に行うものであり、データと情報技術の活用によって新しいビジネスモデルやプロジェクトの創出における即時性やコスト削減などの新たな価値を生み出すことが目的とされています。

DXの重要性の高まり

DXは人々にとってますます重要なものとなっています。理由は以下の3点による環境の変化だと推測されます。

・スマートフォンなどの普及に伴う消費行動の変化
・IoT化の進行
・デジタルを武器とした新興勢力の台頭

理由の一つ目は、個人における消費行動の変化があげられます。スマートフォンやタブレット端末が普及して生活インフラとして根付き、消費者の関心や体験がデジタル上に移行しています。消費者の行動、嗜好、価値観が変化する中で、それに対応する形で新規サービスやプロジェクトの展開が求められています。

二つ目は、これまでインターネットに接続されていなかったモノのIoT(Internet of Thing/モノのインターネット)化が進んだことです。これまでインターネットはパソコンおよびスマートフォン、タブレット端末といったコンピューターに接続されることが一般的でしたが、それ以外の住宅・TV・家電製品等がインターネットに接続されたことで、日常生活のデジタル化が進み、DXを重要視する見方が一気に増えてきました。

三つ目は、デジタルを武器とした新興勢力の台頭があげられます。AIやIoTといったデジタル技術が飛躍的に発展したことでサービスが安価で提供されたり一般化が進んだりして、利用が容易になりました。これにより、既存のビジネスモデルを破壊するようなデジタルを武器とした企業が誕生し、既存サービスやプロダクトを脅かす状況が発生しています。

国土交通省が実現をめざすDX技術とその取り組み

国土交通省が実現をめざすDX技術とその取り組み

このようにDXがますます重要になる中で、企業や組織において様々な分野におけるDXが急速に進んでいます。私たちに身近な例として、インフラ分野におけるDXがあげられます。公共施設、ガス・水道、道路・線路、電気、通信など、インフラは私たちの生活基盤として重要な役割を果たしています。

DXによりインフラを提供する現場の安全性・効率性を追求するとともに、インフラサービスを利用する国民の利便性向上のための取り組みが進められています。ここではその一例を紹介します。

災害リスク情報を3次元化

国土交通省の「インフラ分野のDX推進本部」では、2020年7月から2021年11月まで4回にわたりDXの施策を議論する会議が開催されています。

2020年7月に開催された第1回会議で配布された資料「インフラ分野のDXに向けた取組紹介」では、ハザードマップなどといった災害リスク情報を「誰もが直観的・空間的・具体的なイメージを得られるようなわかりやすい情報として提供することが必要」と記されています。

そして2021年11月に開催された第4回会議では、主な施策の進捗の一つとして水害リスクを視覚的に分かりやすく発信するため、3次元表示手法の検討や民間企業との幅広い連携などによるリスク情報の提供を推進していることを公表。具体的には3D都市モデル「PLATEAU(プラトー)」との連携によるリスク情報提供や、国土地理院が提供する地理院地図の3次元リスク情報表示「重ねるハザードマップ3D」の公開などがあります。

3D都市モデル「プラトー」とは、国土交通省が 「Project PLATEAU」 の一環として整備する、現実世界の都市を仮想的な世界(サイバー空間)に再現した3次元の地理空間データです。国土交通省と民間企業が提携し、プラトーを用いて様々な実証実験が行われています。

国土交通省が実現をめざすDX技術とその取り組み

垂直避難可能な建物のピックアップ

プラトーでは、建物の高さや形状を3次元情報として取り込むことで様々なシミュレーションが可能となります。

日本では想定される最⼤規模の洪⽔が起こった場合、市街地のすべてが浸水してしまうエリアは少なくありません。こうしたエリアでの有効な防災手法の一つが、住⺠が⾃宅や周辺の建物の高層階に避難する「垂直避難」です。

株式会社三菱総合研究所が行った実証実験では、福島県郡山駅周辺エリアで「垂直避難」可能な建物を選出し、3D都市モデル上への表示を試みました。

これによりエリアの洪水による災害リスクを3Dで可視化し、垂直避難可能の建物を示すことで自宅や周辺エリアの垂直避難の可否を事前に把握することが可能となりました。

加えて避難所や避難場所もあわせて表示することで、浸水が深く周辺に高い避難場所が少ない地域の住民に対しても、早めの避難行動を促すことができるのです。

今後の課題としては、「垂直避難可能」の判定が住民にとって安心材料となってしまい、適切な避難行動が取られない可能性が生じることがあげられており、住民の防災意識の向上を図ることが必要だと考えられています。

垂直避難を取り入れた防災政策のさらなる高度化や、他都市における同様の取り組みの展開も期待されています。

避難訓練シミュレーションツールの活用

森ビル株式会社では、東京都港区虎ノ門ヒルズに作成した屋内モデルと3D都市モデルをつなぐバーチャル空間を構築。建物内から建物外への避難の動きを再現・検証できる避難シミュレーションツールを制作し、避難訓練の効果を検証しました。

20~50代の男女約20名を対象にツールを体験してもらった結果、バーチャル空間を活用した避難シミュレーションや訓練支援ツールを用いて現実空間での避難訓練を疑似的に体験することで、訓練の効果が表れる可能性を確認できました。

一方で、バーチャル空間を構築するために利用する建築物のデータの入手までに、煩雑な作業が多いという課題があることも分かっています。

今後は、IoTを利用して即時的に情報を収集し、3D都市モデルに蓄積することで技術開発を継続すると国土交通省は公表しています。

街中の回遊状況の把握・賑わい創出への活用

プラトーでは、ユーザーのスマートフォンアプリを通じて取得された位置情報データを個人が特定できないように編集・加工したエリア間の人流を道路ネットワークデータ上で表示することもできます。これにより、エリア内の滞留人口や流入人口、滞在時間を可視化できます。

このようなデータを活用した街づくりの取り組みは既に一部の都市で行われており、兵庫県豊岡市では、スマートフォンのユーザーの位置情報から観光客と推定できるデータのみを抽出し、属性や交通手段、立ち寄った場所などのデータから「どこから、どのような人が、どのような観光をしているか」を分析し、観光戦略の立案に活用しています。

国土交通省の「Project PLATEAU」と連携することによって、エリアの活性化や賑わいにつながるビジネスやプロジェクトの創出が期待されています。

最新技術で実現する?日本がめざす「スマートシティ」

内閣府によると、「スマートシティ」はICTなどといった新しい技術を活用し、都市や地域のマネジメント(計画、整備、管理・運営など)を高度化しながら、様々な課題の解決を行い、新たな価値を創出する持続可能な都市や地域と定義づけられています。

なお、 ICT(Information and Communication Technology)とは、「通信技術を利用したコミュニケーション」を意味し、テレワークやクラウドによるデジタルコンテンツ(映像・音楽等)の提供、収集したビッグデータの利活用などが含まれます。

プラトーの3D都市モデルとデータの利活用によって、都市計画・整備の高度な分析が可能となり、より効率的な管理・運営ができる可能性があります。このように国土交通省のインフラDXは、スマートシティ実現への一端を担っているといえるでしょう。

日本におけるスマートシティ実現に向けた取り組みについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
【都市の未来像・スマートシティとは?後編】スーパーシティ法案で日本の都市はどうなる?

インフラのDXがめざす未来

DXの目的は、デジタルテクノロジーの進化で人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させることです。

3D都市モデルやICT、IoTなどはあくまでツールであり、国土交通省のDX施策の目的は「業務そのものや、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革し、安全・安心で豊かな生活を実現」することと公開資料に記されています。

インフラ分野のDX施策が進行することで、防災が強化され街の安全性が高まり、街づくりという地域の活性化や新たなビジネスの創出などが実現できる可能性が高くなるといえるでしょう。近い未来にはICTやIoTなどを駆使したさらに安心・安全で豊かな生活が実現できるかもしれません。

ライタープロフィール
田中 あさみ
田中 あさみ
金融系ライター。大学在学中にFP資格を取得し、卒業後は会社員を経て独立。現在はフリーライターとしてメディアや企業サイトなどで金融系・不動産テック・DXなどの記事を執筆する。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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