AI時代に求められる、「AI活用人材」の育成をめざす教育とは?

AI時代に求められる、「AI活用人材」の育成をめざす教育とは?

AI時代に求められる、「AI活用人材」の育成をめざす教育とは?

私たちの生活において身近な存在になりつつあるAI。政府は「AI戦略」を掲げ、様々な問題解決にAIを活用できる「AI活用人材」の育成を後押ししています。AI活用人材の必要性や教育内容、そして教育によってめざす社会について紹介します。

「AI活用人材」とは

「AI活用人材」とは

ロボット掃除機や写真加工アプリなど、日常の様々な場面でAI(人工知能)が使われるようになり、近年ますます身近な存在になっています。

AIは、データ学習によって音声・画像の認識や検索・探索、言葉をコンピューターに理解させる自然言語処理などを行うことが可能です。その能力を活用した商品やサービスが消費者の手元に届くまでには、AIを研究・活用・提供する人材の存在が必要不可欠です。

例えば、ロボット掃除機を世に送り出すまでには、AIの研究・開発者、AI技術を掃除に活用するためにシステム開発・データ分析を行う人や、お掃除ロボットを企画・提供する人が存在しています。

この、AI技術に関わる人材の中でも、AIを使いこなして社会課題やビジネス課題を解決できる能力を持つ人材を「AI活用人材」と呼びます。

AI活用人材の育成が必要とされている背景

AI活用人材の育成が必要とされている背景

では、なぜAI活用人材の育成が求められるのでしょうか。ここではその背景について解説していきます。

AI活用人材の不足

AIは様々な分野で活用が進んでおり、経済産業省が2016年に公表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」においても、AIをはじめとしたロボットやビッグデータなど先端IT技術は「今後大きな影響を与える技術」と位置付けられ、市場拡大が見込まれています。

一方、日本ではIT分野の人材不足が大きな課題となっています。独立行政法人情報処理推進機構が公表する「IT人材白書2020」では、2019年度の調査でシステム開発・データ分析を行う企業(IT企業)の26.2パーセントが「IT人材の量が大幅に不足している」、66.8パーセントが「やや不足している」と答え、合計で93パーセントの企業が人材不足を感じているという結果になっています。

政府による人材育成の後押し

IT人材不足が懸念されている中、近年日本政府がその育成を後押ししています。

2017年3月に官民が連携し、人工知能技術の研究開発から社会実装をめざす取り組みがスタート。内閣府科学技術・イノベーション推進事務局では、2019年に「AI戦略2019」、2021年に「AI戦略2021」が統合イノベーション戦略推進会議にて決定されました。

「AI戦略2019」の冒頭では、「AI技術の進歩により米国や中国では多くの企業で破壊的なイノベーション(革新)が生み出されているものの日本は後れを取っている」旨が記されています。

例えば、アメリカの電気自動車メーカーは、AI技術による完全自動運転プロジェクトを進行しており、業績は大幅な躍進を遂げています。

また2018年の調査では、中国企業のAI導入状況がアメリカを抜き世界1位(85パーセント)となった一方、日本は先進7ヵ国の最下位(39パーセント)と、AI分野で後れを取っている状況です。

こうした状況を踏まえ、「AI戦略2019」では、AI技術を利活用できる分野は広範囲にわたり、これから日本が参戦できる余地もあるという見解が示され、AI活用人材の教育改革や、農業や医療など様々な分野へのAI導入を提案。最終的にはAIを応用し産業競争力を強化すると同時に、「多様性を内包した持続可能な社会」の実現をめざす技術体系の開発が目標に掲げられました。

さらに経済産業省では、2000年から「未踏的な(今まで見たことがない)」アイデアや技術をもつ若手人材の発掘・育成プロジェクトを実施。2000年度から21年間にわたり、1,700人の未踏IT人材を発掘・育成し、270名以上が起業・事業化を行っています。

こうしたAI活用人材の育成は、生活者の生活を便利にするだけではなく、日本経済における労働人口の減少問題を解決し、産業・企業の発展ならびに日本の経済的な成長に貢献することが期待されています。

AI技術の進歩とその活用

では、AIの活用によって今後どのようなことが可能になっていくのでしょうか?

一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会は「AI活用人材育成講座」において、具体的にAI活用が注目される業界として介護・ヘルスケア、金融、医療、農業などをあげています。

ここでは一例として、介護・ヘルスケアと農業の分野における具体的な活用事例を見ていきましょう。

介護・ヘルスケア

内閣府は戦略的イノベーション創造プログラムとして、音声でカルテを入力する「AI自動音声書面記録」の開発や、「AI自動車いす」による患者の院内移動補助などの事業を実施しています。

「AI自動音声書面記録」は現在、同意が得られた患者と医師・看護師との会話音声を記録している段階で、記録が集まった後は音声データを文字変換のための機械学習に利用する予定です。

また、「AI自動車いす」に院内の地図情報を記憶させることで、患者は自動運転で目的地まで移動でき、利用後は無人運転で返却することができます。

これらによって医師や看護師の業務が効率化され、医療従事者の負担軽減や働き方改革にもつながるとされています。

農業

農業は収穫量や価格が変動しやすく、需要と供給のミスマッチが起こりやすいという課題を抱えています。

そこでAIが気温や降水量などの天候、生育状況、市場の過去・現在の卸売価格データなどを基に卸売市場価格を予測。野菜は環境や気温・個体差などにより生育状況が変化しますが、映像データを解析するAIによって収穫量を予測することにも成功しています。

AIのデータ解析によって作物の適正な収量・収穫期を予測し、無駄のない生産を行おうとする取り組みが始まっているのです。

AI活用人材育成のための教育

AI活用人材育成のための教育

AI技術は医療や農業など様々な分野で利用され、今後も幅広い活用が期待されています。AI活用人材を育成するために、全国の大学・高等専門学校の中にはAIを事業や社会に活用するための授業を取り入れ始めた学校もあります。

AIを活用するために身に付けるべき力とは

2019年に内閣府・文部科学省・経済産業省の3府省において募集した『AI時代に求められる人材育成プログラム~デジタル社会の基礎知識「数理・DS・AI」教育 グッドプラクティス~』では、73の大学・高等専門学校による計97プログラムの応募がありました。

また、AI・データサイエンスの講義は理系の大学だけではなく、文系の大学・学部でも開講されています。

一般的な授業の流れは、まず導入として産業構造の変化などAIが求められる社会背景の知識やAI技術・データサイエンスの基礎知識、AIの活用事例を扱います。

次に、データ解析に関する基礎知識や、セキュリティや個人情報保護等などデータの利活用に関する留意事項を学びます。

そして基礎を学んだ後は、実践編としてプログラミングやシステム開発プロセスなどを学び、具体的なアウトプットに向けてアプリケーションデザイン、Webページ開発などのコースを学生が選択して学習していきます。

AI活用人材を育成する教育プログラムは大学だけでなく、一部の高等学校の情報の授業でも導入が検討されています。また、オンライン上で誰でも受講できるサービス、MOOC (Massive Open Online Course)での講義が開設されるなど社会人でもAI活用のための学習ができる環境が整いつつあります。

AI活用人材育成の先にめざす社会

高齢化や人口減少、気候変動など、様々な社会問題や地球規模の環境問題に直面している現代ですが、これらはAIをはじめとしたテクノロジーのみで解決できるものではありません。

これからAI技術がより身近になっていくことが予測されますが、内閣府が行った「人間中心のAI社会原則会議」によると、AIはあくまで人間の生活を便利にしたり、豊かにしたりするためのツールと位置付けられています。

そのためAI活用人材は、対人間の「提案力」「問題解決能力」を身に付けることも重視されており、AIが習得することが難しい柔軟な発想やアイデアの提案、相手の立場を考慮しながら課題を解決する能力が求められています。

政府は単にAIによって効率性や利便性を向上させるだけでなく、社会の在り方の質的変化や真のイノベーションを起こし、地球規模の持続可能性へとつなげることをめざしています。日本で優秀なAI活用人材を産み出すことは、今までになかったビジネスやソリューションを創出して社会課題を解決に導くことにつながります。AI活用人材の育成は、日本の未来を変える鍵を握っているといえるかもしれませんね。

ライタープロフィール
田中 あさみ
田中 あさみ
金融系ライター。大学在学中にFP資格を取得し、卒業後は会社員を経て独立。現在はフリーライターとしてメディアや企業サイトなどで金融系・不動産テック・DXなどの記事を執筆する。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。

田中 あさみの記事一覧はこちら

RECOMMEND
オススメ情報

RANKING
ランキング