メタバースとは?広がる仮想空間の未来

メタバースとは?広がる仮想空間の未来

メタバースとは?広がる仮想空間の未来

Facebookが社名を「Meta(メタ)」に変更するなど、今、「メタバース」という概念が注目を集めています。メタバースの可能性や未来について、北海道大学客員教授の小川和也さんにお話を伺いました。

メタバースの語源は「メタ+バース」

メタバースの語源は「メタ+バース」

「メタバース」とは、「meta(超越、高次の)」と「universe(宇宙)」を組み合わせた造語で、1992年に発表されたニール・スティーヴンスンの小説『スノウ・クラッシュ』において初めて使用されました。

一般的に、オンライン上に構築された3次元の仮想空間や、3次元の仮想空間を使ったゲームなどのサービスを指します。また、メタバースを具現化した先駆けは、20年ほど前に流行した、仮想空間での生活を自由に楽しむオンラインゲームだといわれています。

メタバースが注目される理由

メタバースが注目される理由

今、メタバースが注目を集めている理由には、「社会的な要因」と「技術的な要因」があると小川さんはいいます。

社会的な要因

メタバースが社会的に注目されるようになったきっかけは、2021年、Facebookが社名をMetaに変更したことです。「ソーシャルネットワーク」という新しい社会を作り上げたFacebookが、メタバースにどのような未来を思い描いているのか?大きなうねりを作り出そうとしているMeta(旧Facebook)の動向に、多くの注目が集まったのです。

小川さんは「Metaには、SNSであるFacebookがピークアウトを迎える中、メタバースに社運をかけて投資を行い、SNSに代わる新たなコミュニケーションプラットフォームとしてメタバースを盛りあげていこうという思惑があるのではないか」と推測します。さらに、メタバースそのものだけでなく、その動きに便乗した投機的な動きが、メタバースへの流れをさらに加速させているようです。

また、昨今リモートワークが一般化し、それによって様々なオンライン会議が普及しましたが、より濃密な対面に近いコミュニケーションを求める声は常に存在します。メタバースでは、アバター(ユーザーの分身として画面上に登場するキャラクター)を使って擬似的に握手をするなどのコミュニケーションができるため、コロナ禍によるコミュニケーション不足を補うという役割も期待されているようです。

技術的な要因

メタバースが注目されている技術的な要因として、小川さんは、メタバースの先駆けとなったオンラインゲームが流行した20年ほど前と比べ、格段に発達した通信環境、サーバーやパソコンといったハードウェアの大幅なスペック向上などをあげます。

例えば、通信環境であれば、20年前と今の通信速度は1Mbpsから1Gbpsと実に1,000倍以上もの差があります。同時に多人数が接続しても安定したシステム運用が可能になり、また、リッチなコンテンツを配信できるようにもなりました。さらに、携帯電話などに用いられる第5世代移動通信システム(5G)の登場によって、外出先であってもメタバースに入ることができます。

また、スマートフォンやVR機器の普及が進んだことも、メタバースが注目を集める一因となっています。高性能化したスマートフォンや高機能かつ軽量化が進むVR機器によって、手軽にメタバースの世界を楽しむことが可能になってきたのです。

メタバースの事例

メタバースの事例

では、メタバースとはどんな世界なのか、実際の例を見ていきましょう。

ゲームの中で有名アーティストがライブ

オンラインゲーム内でバーチャルイベントが開催され、実物映像を使ってアバター化した人気のシンガーソングライターが登場し、楽曲を披露しました。ユーザーは、自分のアバターを使って会場となるライブ空間まで「出かける」こと、また、アーティストや曲の世界観で作られたライブ空間にユーザー(アバター)も入り込んで参加できる演出などが、より没入感が得られると話題になりました。

さらに、ライブ空間ではアバターのいる位置やアバターの動きによって曲の聞こえ方が変わる(例えば、右を向いているときと左を向いているときでは音が変わる)といった、現実世界に近い感覚を味わえる工夫もユーザーを引き込んでいったようです。

メタバースで仕事をする

リモートワークの普及に伴い、社員同士のコミュニケーション不足が指摘されています。社内で挨拶を交わしたり、ちょっとした隙間時間に情報交換をしたりする「何気ない交流」が失われてしまったためです。

その解決策の一つとして、メタバースの導入があります。アバターを使って、メタバースにある会社に出社し、会議などを行うのです。VRヘッドセットの使用を前提とするメタバースプラットフォームや、スマートフォンやパソコンからでも参加できるプラットフォーム、自社が提供しているビジネスツールと連携しやすいプラットフォームなど、様々なメタバースプラットフォームが登場しています。

メタバースが普及するために

メタバースが普及するために

活用が進みつつあるメタバースですが、普及にはまだ越えなければならない課題やハードルがあると小川さんは指摘します。

肉体的・精神的な負担

まずは、肉体的・精神的な負担です。小川さん自身、様々な機会にVRヘッドセットをつけてメタバース空間に入ったそうですが、「VR酔い(ヘッドセット越しの映像により平衡感覚が狂い、乗り物酔に近い状態になってしまうこと)」になり、空間から出たあとは疲労感を覚えることが多かったそうです。

また、「将来的に現実とメタバース空間の区別が難しいほどリアルになってくると、仮想空間への引きこもりが問題になってくるだろう」といいます。

さらなるテクノロジーの進化が求められる

現在、市販されているVRヘッドセットの多くは、以前に比べればかなり軽量化が進んではいるものの、手軽に体験するには更なるテクノロジーの進化が求められます。小川さんいわく、「メガネ、できればコンタクトレンズのように軽く、誰もが気軽に装着できるようにならないと普及は難しいだろう」といいます。

イメージを悪化させる動き

小川さんは、メタバースを取り巻く詐欺的な動きなども普及の妨げになっていると指摘します。

「例えば、メタバースとセットにすることで高額なNFT(ノン・ファンジブル・トークン/偽造不可能な所有証明書付きのデジタルデータ)によるデジタルアートや仮想通貨を売りつけようとするケースが増えています。これでは、メタバース=胡散臭いというイメージが定着しかねません」

メタバースは、ビジネス面でも大きな可能性を秘めていますが、まだどこも手探り状態にあります。だからこそ、イメージが重要になってくるのです。

人類にとってメタバースは必要なのか?

新しい技術が普及するには、どれだけ多くの人から求められ、「社会の要請」となるかが重要になります。例えば、ライト兄弟が初飛行を成功させたとき、時間にしてわずか12秒間、距離にして約36mでした。とても実用性があるとはいえず、しかもその後、様々な人が飛行機事故で亡くなっています。

それでも飛行機の開発が進み普及したのは、空を飛び、速く、遠くへ行きたいという壮大な夢が社会の発展につながると多くの人が信じ、社会が飛行機の存在を求めたからです。自動車やインターネットもまた、新しい未来を創る、社会に必要なものとして求められて発展を遂げてきました。

「こうした技術の発達と比較すると、メタバースには現時点で、多くの人や社会に求められるような要素は多くありません。今後、メタバースが普及していくためには、私たちの価値観をさらに変えるような何かが必要になってくるのかもしれません」

その一つのヒントとなるのが、メタバースによって創造される未来です。

メタバースが普及するとどんな未来が創造できるのか

メタバースが普及するとどんな未来が創造できるのか

では、メタバースが普及することで、どんな未来を創造できるのでしょうか。

「不老不死」をアバターで実現する世界

メタバースを語るうえでよく取りあげられるキーワードの一つに、「不老不死」があります。小川さんは、現実世界で実現するのは難しいとしながらも、メタバースなら可能性は十分にあるといいます。

「思考や記憶などをデータとして取り出し、メタバースで自分と同じ人格のアバターを作ります。その結果、自分の死後も自分の分身ともいえるアバターがメタバースで生き続けことができるのです」

個々人の理想が反映されたユートピア

不老不死ともう一つ、メタバースを語るうえでよく取りあげられるキーワードが「ユートピア」です。小川さんは、「ユートピアは、永遠の命への憧れや理想の暮らしが実現する、極楽浄土的なイメージ」だといいます。

ユートピアは、すべての人類にとって一つの共通した世界ではなく、個々人にとっての憧れや理想が反映された世界だと考えることができます。メタバースによって自らの理想に基づいた世界観や没入感を実現できれば、自分にとってのユートピアを手に入れられるかもしれません。

まとめ

まとめ

多くの人に求められなければ、新しいテクノロジーは普及していきません。また、どんなビジネスとつながるかで未来も大きく変わっていくでしょう。小川さんは、「現在、メタバースにおいては様々な取り組みが行われていますが、今のところ、社会から求められるような決定的な“何か”は見出されていません。しかし、メタバースは始まったばかりです。可能性や夢はまだまだ十分にある」といいます。

この記事を読んでいただいた方々は、メタバースの在り方や未来に何を感じたでしょうか?メタバースの可能性を広げるのは、私たちの価値観やアイデア次第なのかもしれませんね。

この人に聞きました
小川和也さん
小川和也さん
グランドデザイン株式会社 代表取締役社長/北海道大学客員教授
アントレプレナーとしてテクノロジーで社会課題解決のグランドデザインを描く一方、フューチャリストとしてテクノロジーに多角的な考察を重ねて未来のあり方を提言。専門は人工知能による社会・報酬システムデザイン。人間とテクノロジーの未来を説いた著書『デジタルは人間を奪うのか』(講談社現代新書)は高等学校現代文教科書を始めとした多くの教材や入試問題にも採用され、近著『未来のためのあたたかい思考法』(木楽舎)では寓話的に未来の思考法を説く。
ライタープロフィール
杉浦 直樹
杉浦 直樹
元歌舞伎役者・ファイナンシャルプランナー・ソムリエという異色の経歴を持つ。大学卒業後、広告代理店制作部のコピーライターとして職に就くも一転、人間国宝四世中村雀右衛門に入門。15年間歌舞伎座・国立劇場などの舞台に立つ。AFP・住宅ローンアドバイザー・JSA認定ソムリエの資格を取得し、金融・伝統芸能・自動車・ワインなどのコラムを執筆。

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