実は身近な存在!世界的に不足している半導体ってなに?

実は身近な存在!世界的に不足している半導体ってなに?

実は身近な存在!世界的に不足している半導体ってなに?

近年、世界的に不足しつつある半導体。とはいえ、「半導体って、何の目的で、どこに使われているの?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。今回、40年にわたり半導体業界を取材している国際技術ジャーナリストの津田建二さんにお話を伺いました。

半導体とは?

半導体とは?

半導体は、電子部品の一つ。例えば、生活の中で使われている半導体に、マイクロコントローラー(マイコン)があります。一般的に消費者がマイコンそのものを扱う機会はほぼありませんが、炊飯器や冷蔵庫、電子レンジなど多くの家電で使われています。

炊飯器の場合、マイコンにお米が美味しく炊きあがる火加減や手順がプログラムされたソフトウェアを記憶させることによって、「美味しいご飯を炊ける」ようになっています。

津田さんは、「マイコンをスマートフォンと同じイメージで捉えると理解しやすい」といいます。スマートフォンは、追加するアプリケーションによって利便性や機能が拡張していき、可能性が広がります。マイコンがスマートフォン本体で、ソフトウェアがアプリケーションの役割を果たしているのです。

家電は、このようなマイコンとソフトウェアにより様々な機能を持ち、付加価値が高くなります。つまり、半導体は私たちの生活をより豊かにしてくれる存在なのです。

ではなぜ今、この半導体が不足する事態に陥っているのでしょうか。

なぜ今、半導体が不足しているのか?

なぜ今、半導体が不足しているのか?

コロナ禍の影響により、半導体製造の一時見合わせや物流の停滞が起き、そのために半導体不足が起こっていると報じられています。一方で、津田さんは「確かにコロナ禍も半導体が不足した要因の一部でしょう。ただ、一番大きな要因は半導体市場が急速に広がったこと」だといいます。

「5G(第5世代移動通信システム)、AI、IoTといった日々進化していくテクノロジーには半導体が欠かせないことから、急激な需要増を引き起こし、ここ数年の半導体不足が生じています」

さらに津田さんによると、今後も半導体が使われる領域は増えていくことが予測されるそうです。例えば、IoT市場は2015年以降、対前年比で25~30パーセント増加しており、その高い成長率はしばらく続く見込みです。

つまり、テクノロジーの進化に伴い半導体の需要は急増し、製造が追いつかない状態だというのです。

では、半導体が不足すると、私たちの生活はどのような影響を受けるのでしょうか。

半導体の不足による影響

半導体の不足による影響

自動車や飛行機、電車などの交通機関から、照明器具や炊飯器、トイレの温水洗浄便座などの家電まで、様々なところに半導体は使われています。その中でも、津田さんは「特に影響が大きいのは自動車業界」だといいます。

自動車製造にかかるコスト全体のうち、半導体を使った電子機器にかかるコストの比率は年々高まっています。例えば、真上から見たように映し出される「360度モニター」では、前後左右4つのカメラを使用し、その画像を合成するのに半導体が使われています。ワイパー制御やオートロック、スマートキーなども同様です。

このように多くの機能に半導体が使われているため、半導体不足は自動車生産自体にも大きな影響を及ぼしています。特に、人気の車種は何ヵ月も納車を待たなければいけない状況のようです。

「ビジネスツールや日常生活にも影響は及んでいます。コロナ禍の影響により自宅でのリモートワークが推奨され、パソコンの需要が高まる一方で、半導体不足により、その供給が追いつかず入手しづらい状況となりました。また、給湯器が故障したものの、部品が入庫せず、数ヵ月先まで修理を待っているという話も聞きます」

増え続ける半導体需要に対して供給が追いつかない状況である一方、半導体産業そのものは世界的に活況を迎えています。

日本はかつて、この業界で世界のトップを走っていましたが、各国でこの分野の開発・研究が進み、そのシェアは大きく変わりつつあります。現在、日本には高いシェア率を誇る「半導体の製造機器メーカー」や「半導体の素材メーカー」はあるものの、「半導体の製造メーカー」が、製品に合わせて半導体をカスタマイズする生産方法をとっておらず、世界の潮流とは異なるようです。 津田さんはこの点について、「日本は良質な半導体を製造できる土壌があるのに、半導体製造の受注チャンスを逃しています。とても残念」と指摘します。

半導体不足は解消に向かうのか?

半導体不足は解消に向かうのか?

今後、半導体市場はどのようになっていくのでしょうか。津田さんは、「半導体不足は2022年も続くが、2〜3年後には解消されるだろう」と予測しています。

「半導体市場の急速な拡大を背景に、最近は半導体の製造工場を設置する企業が増え始めています。こうした動きは今後も加速していくことが予測され、半導体不足は徐々に解消される方向に向かうでしょう」

また、製品の進化もカギとなります。汎用性のある半導体を利用し、半導体に載せるソフトウェアの力で製品機能を充実させる取り組みも始まっています。半導体の進化、ソフトウェアの進化、製品の進化、すべてが影響しあって半導体不足解消へつながるというのです。

一方で、ここ数年のテクノロジーの急速な進化を鑑みると、半導体需要はさらに加速するとも考えられ、半導体の製造が追いつかず「結局、半導体不足は解消されない」という予測もあります。

しかしその点について、津田さんはこのように話します。「需要の加速だけでなく、半導体製造自体も効率化されて製造期間が短くなってきているため、やはり結果として解消するでしょう」

半導体によって変わっていく私たちの生活

半導体によって変わっていく私たちの生活

半導体不足の解消や、先に述べたような「半導体の進化、ソフトウェアの進化、製品の進化」によって、津田さんは「より便利で安心、安全な世界になる」と話します。

「家電や自動車、5Gなどによる通信環境の進化により、私たちの生活はより便利になってきました。例えば、スマートフォンは家の鍵や財布代わりになるなど、様々な機能を備え、多くの用途で活用され始めています。また、賛否両論あるとはいえ、近年街中に設置されている防犯カメラは、住民の安全に一定の効果を発揮しているはず。ここでも半導体が利用されています」

そして、それら製品を支えるために暗号化やファイアウォールといったセキュリティ技術も進化し、そこでも半導体が使われています。半導体は、私たちの生活をより便利に、豊かにするだけでなく、安心・安全な世界にしていくテクノロジーだともいえるのです。

最後に津田さんは、「半導体は、5Gの普及などと相まって、多くのビジネスシーンに変革をもたらすことが期待されています。その重要性が高まる中、日本が再び、世界に誇る技術力を持って半導体業界を牽引していけるようになることも期待したい」と話します。

私たちの生活に不可欠な半導体がさらに進化した未来は、どのようなものになっていくのか。そして、日本の半導体産業はどうなっていくのでしょうか。今後もこの分野から目が離せないですね。


参考:
・『知らなきゃヤバイ!半導体、この成長産業を手放すな』(日刊工業新聞社)津田建二著

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津田建二さん
津田建二さん
国際技術ジャーナリスト。セミコンポータル編集長。newsandchips.com編集長。半導体・エレクトロニクス産業を40年取材。日経BP社を経て、Reed Business Informationで、「EDN Japan」「Semiconductor International日本版」を手掛けた。著書に『メガトレンド 半導体 2014-2023』(日経BP)、『欧州ファブレス半導体産業の真実』(日刊工業新聞社)、『グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011』(インプレス)などがある。
ライタープロフィール
佐々木 倫子
佐々木 倫子
ライター、金融アナリスト
日系銀行、シティバンク、シティトラスト勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報を経て、金融に強みを持つライターとして活躍。これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。過去の歴史や経緯を含めた執筆が特色で、食等幅広い分野の執筆も手掛ける一方で、マスコミにて政治、経済を中心としたコラムに関わる仕事やキー局のラジオ番組制作にも従事。日本ウズベキスタン協会理事として中央アジア・ウズベキスタンと日本の友好にも尽力。

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