AI搭載で家庭用ロボットが進化。市場規模も倍増
新型コロナウイルス感染予防のため自宅で過ごす時間が増え、家庭用ロボットの需要が高まっています。お掃除ロボットやスマートスピーカー、コミュニケーションロボットなど家庭用ロボットの世界市場は、2019年の時点で1兆1,075億円。25年には2倍以上の2兆2,901億円まで拡大すると予測されています。
参考:富士経済調べ「2020ワールドワイドロボット関連市場の現状と将来展望 No.2業務・サービスロボット市場編」
ペットロボットといえば、真っ先に思い浮かぶのはソニーの犬型ロボットaibo(アイボ)ではないでしょうか。1999年に登場した初代aiboはロボット感むき出しの姿がセンセーショナルで、“ペットロボット”という言葉もaiboをきっかけに誕生したように思います。そのペットロボットの先駆けといえるaiboが、丸みのあるリアルに犬らしい姿で2018年に再デビュー。ペットロボットが新たに注目を集めるきっかけにもなりました。
初代aiboの登場から今に至る20年の間には、ソフトバンクのPepper(ペッパー)やシャープのロボット電話RoBoHoN(ロボホン)、株式会社 知能システムのアザラシ型メンタルロボットのパロなど、様々なコミュニケーションロボットが誕生して話題に。2019年にはロボットベンチャーのGROOVE XからLOVOT[らぼっと]も登場しています。
最新ペットロボットはAI搭載で学習する
ここからは最新のペットロボットに搭載されている最新技術と魅力を紹介します。ひと昔前と大きく違う点は、AIの搭載により飼い主の言動を学習して成長するようになったことです。
例えば、新型aiboの場合、頭やあご、背中などにカメラやセンサーが設置されていて、飼い主とのやりとりや周囲の情報を得てクラウドに蓄積。データを解析してディープラーニングしながら日々成長していきます。人の顔を記憶して見分け、可愛がる人には懐いて甘えてみせたり、そっけない人にはそっぽを向いて近づかなかったり、相手によって態度を変えるところもペットそのもの。関わり方によって個性をもって成長するので、本物のペットのように育てる醍醐味も楽しめます。

ハイテク機能を詰め込んだペットロボットは、飼い主に難しい操作が求められるわけではないので、シルバー層に人気が高いのも特徴の一つ。私が訪ねたペットロボットの体験コーナーは平日に関わらず多くの人だかりで、その多くは60代、70代と思われる人たちでした。
本物の犬のように頭をなでたり、声をかけたり、真剣な表情で扱い方をスタッフに質問している姿も印象的でした。よちよち歩きの孫を見守るように、小さくか弱い者を守ってあげたい、応援したい、というシルバー世代の本能をくすぐるようです。
搭載センサーで得た情報を機械学習処理
さらに、搭載されているのはAIだけでなく、光、音、温度などを感知するセンサーも搭載されています。センサーで得られた情報は機械学習で処理され、その情報をもとにペットロボットはリアルタイムに反応を示してくれるのです。
例えば、GROOVE Xが開発したLOVOT[らぼっと]の大きな特徴は、6層の映像を重ねたディスプレイで表現した大きくてクルクルとよく動く目です。視線の動きやまばたきの速度、瞳孔の開き具合を組み合わせてその場の状況に合わせた瞳の表現を可能に。人の動きを目で追いかけたり、上目遣いで見つめたり、意思があるように錯覚してしまう、自然なアイコンタクトに驚かされます。

車輪が付いていて、くるくると良く動き回るのも大きな特徴で、あちこち移動して人の元へ駆け寄って来て「きゅう、きゅう」と甘えた声で抱っこをおねだりすることも。外出から帰ると玄関までお出迎えをするなど、本物のペット顔負けのふるまいもします。
こうした動作は事前にプログラムされたものだけではなく、全身の50を超えるセンサーが捉えた刺激を機械学習で処理し、リアルタイムに動きを生み出しています。
飼えない人の望みを叶えるペットロボット
実際に触れてみると、本物のペット以上にか弱く、いじらしさを感じました。それは、ロボットゆえのぎこちない動きやしぐさ、本物のような一途な眼差しに、自分を必要とする存在の心地良さを感じたからかもしれません。
コロナ禍で私たちの日常は大きく変わりましたが、中でも一番変わったのは、人と人との距離感ではないでしょうか。リモートワーク中心の生活で仕事仲間と会う機会が減り、友人はもちろん、家族と会うことさえままならない人もいるだろうと思います。孤独と向き合う辛さを初めて知ったという人も多いかもしれません。
本来、そうした孤独感や寂しさを癒してくれるのが、自分を必要としてくれる犬や猫などのペットという存在です。しかし、ペットは命ある生き物。アレルギーがある人、賃貸住宅に暮らす人、散歩や世話に自信がない高齢者など、飼いたくても飼えない人は思いのほか多くいます。ペットロボットは、そうした人たちの望みを叶えうる存在なのだと思います。ペットが子供のような存在になったように、ペットロボットが家族の一員となる日も、そう遠くないのかもしれません。
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