スーパーマーケットの未来、スマホで注文したら「30分で届く」が実現する?

スーパーマーケットの未来、スマホで注文したら「30分で届く」が実現する?

スーパーマーケットの未来、スマホで注文したら「30分で届く」が実現する?

登録者数が増加するなど近年広がりを見せているネットスーパー。中国では30分配送が実現するなど、ますます便利に進化しています。今回は中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い山谷さんに伺い、ネットスーパーの最新事情を紹介します。

コロナ禍で起きたネットスーパーニーズの高まり

コロナ禍で起きたネットスーパーニーズの高まり

新型コロナウイルスの感染拡大で外出が制限された影響で、自宅で調理して食事をする機会が増え、食料品の販売が伸びました。その購入方法として、スマートフォンで注文した商品が配達されるネットスーパーのニーズも急速に高まっています。

例えばスーパーマーケットの「イオン」などを運営するイオンリテールでは、2020年3月~8月のネットスーパーの新規登録者数が、前年と比べて約3倍に。こうした需要の増加に応えるため、イオンリテールでは2020年8月に180店舗で導入していたネットスーパーを約200店舗まで増やし、さらに今後2〜3年で250店舗まで拡大していく予定。ネットスーパーで注文した商品を車に乗りながら受け取ることができる、ドライブスルー方式のサービスも拡充していくようです。

東京都を拠点とするスーパーマーケットチェーンの西友では、2020年3月以降、ネットスーパーの売上高伸び率が、前年と比べて30パーセント超えを記録。ネットスーパー向けの物流センターを新しく開設する予定(2021年2月現在)で、増加するニーズに対して物流面を強化していくといいます。

日本のネットスーパーでできること

現在、一般的な日本のネットスーパーでは、野菜や果物、乳製品や肉といった生鮮食品も含め、スーパーで売られているものを購入することができます。注文してから到着までにかかる時間は半日〜1日程度。

ただ、中国在住歴18年でアジアの最新IT事情に詳しい山谷剛史さんによると、この「半日〜1日程度」の配送時間はまだまだ短縮化していくと考えられているそうです。

「現状、国内のネットスーパーでは、15時までの注文はその日の20~22時の時間帯に配送され、15時以降の注文分は翌日の配送になるというスピード感が主流です。

しかし、従来の店舗型のスーパー利用者には、『今日の夜は何を食べようかな』と当日に考え始め、午後や夕方頃に、夕飯の食材を買い出しに行くというスタイルの方も多いはず。そうなると、ネットスーパーの半日から1日の配送時間はどうしても生活スタイルに馴染みにくいのです。」(山谷さん)

中国では、こうした配送時間などの問題を解決する最新事例が出てきているそうです。

中国のネットスーパー最新事例。注文して30分で生鮮品が到着する。

中国のネットスーパー最新事例。注文して30分で生鮮品が到着する。

中国のIT大手アリババグループが展開する「盒馬鮮生(フーマフレッシュ)」では、店舗から半径3km以内の範囲内であれば、なんと30分で商品が到着します。

「このようなスピードが実現しているのは『ピックアップ5分、移動20分、訪問5分』の計30分のオペレーションが徹底されていることに理由があります。ユーザーがアプリで注文→データベースに情報が送信→情報を基に店舗スタッフが陳列してある商品を専用のバッグにピックアップ→詰め終わったバッグは専用のリフトを通じて配送スタッフへ→移動、訪問という仕組みになっています」

ちなみにこの最短30分の配送エリア、中国では不動産仲介会社が「駅徒歩5分」のように「フーマフレッシュエリア」として打ち出すこともあるそうです。

「仕事が終わって自宅へ帰宅中に注文を入れておき、家に着いたタイミングで食材が届いているようにできるなど、『30分配送』は生活シーンを大きく変えていることが予測できます」

「料理を持ってくるのはすべてロボット。席にあるQRコードを読み取れば、注文から決済までその場で完了する取り組みを行っている実験的なフードコートもあります。また有機野菜など、ネットスーパーで購入できる生鮮野菜などをメニューとして取り揃えることで、食材への信頼を得ています」

他にも!新しいスーパーのかたち

他にも!新しいスーパーのかたち

ネットで商品を注文してから店舗や駐車場で受け取る「Click & Collect(クリック アンド コレクト)」というスタイルは、世界各国で導入が進んでいるサービスです。

他にも!新しいスーパーのかたち

例えばAmazonは日本の一部地域でも利用できる生鮮食品デリバリー「Amazonフレッシュ」を提供していますが、2020年9月にはその店舗版もカリフォルニア州でオープンさせました。利用者はオンラインで注文した食料品を、店舗のカウンターで受け取ることが可能。指定された駐車スペースまで、商品を運んでもらうこともできます。

さらにこのリアル店舗では、「Dash Cart(ダッシュカート)」と呼ばれるショッピングカートを使うことで、レジに並ぶ必要がないという特徴もあります。利用者は自分の購入したい商品をカートに乗せ、Dash Cart専用のレーンから出るだけ。すると、事前に登録しておいた決済サービスから料金が引かれ、支払いは自動的に終了する仕組みです。

日本でもスーパーにおけるClick & Collectの先駆けとして、イオンリテールがネットで注文した商品をドライブスルーもしくは店舗で受け取るサービスを開始しています。また西友も2020年5月から、ネットで注文して店舗で受け取るサービスを導入しました。

スーパー以外の業界を見ると、マクドナルドやスターバックスなど大手飲食チェーンでは、事前にスマホアプリで注文しておけば、レジに並ばずとも商品を受け取れる「モバイルオーダー」を展開しています。こうした仕組みがスーパーでも一般的になる未来は、近いのかもしれません。

そんなスーパーのデジタル化が進む未来を、山谷さんは次のように考えているそうです。

「例えばスマホで食材を注文し、家まで届けてくれるスーパーが普及すれば、単純に家から出なくて済みますよね。ただ、一方で店舗に足を運んで、自分の目で商品を確かめてから購入したいという方もいるでしょう。どちらが良い悪いではなく、より多くの選択肢から自分の生活スタイルにあった買い方を選べる。そんな未来が来ると考えています」

参考:
・『中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか?』(星海社新書)山谷 剛史著
・『事例でわかる 新・小売革命 中国発ニューリテールとは?』(CCCメディアハウス)劉 潤(リュウ・ルン)著

・QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。

この人に聞きました
山谷 剛史さん
山谷 剛史さん
ライター、ジャーナリスト。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。近著は『中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本』(星海社新書)。ほか『新しい中国人~ネットで団結する若者たち』(ソフトバンク新書)、『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 』(星海社新書)など多数。
ライタープロフィール
吉田 祐基
吉田 祐基
株式会社ペロンパワークス・プロダクション所属。AFP認定者(2級FP技能士)。タウン誌、編集デザインファーム、大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。これまでコンテンツマーケティングや、ミレニアム世代向けビジネスメディア、不動産広告の取材&ライティングなどを手がける。

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