「コーヒーの2050年問題」とは
コーヒーには大きく分けてアラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種がありますが、この3種類のなかで最も多く生産されているアラビカ種の生産量が、2050年までに現在の50パーセントまで落ち込むと予想されています。これが、コーヒーの2050年問題と言われています。
アラビカ種は主に、「コーヒーベルト」と呼ばれる熱帯地域の標高が1,000mから2,000mの場所で栽培されます。コーヒーとしての品質が高く、香りや風味に優れている点が特徴ですが、虫害に弱く、乾燥や霜などの影響も受けやすい品質です。
「コーヒーの2050年問題」の原因は?
気温上昇によりアラビカ種に適した栽培地が減少
地球温暖化の影響で、気温が上昇、アラビカ種の栽培に適した環境が減少しています。
例えば、乾期が長く気温が高い地域(ブラジル、インド、中央アメリカの一部など)では、現在の栽培地の約8割でコーヒーの栽培が難しくなると考えられています。

コーヒーへの脅威「さび病」の増加
コーヒー農園をわずか2,3年で壊滅させてしまう恐れのあるのが「さび病」です。その胞子は空気を介してほかの葉や木に感染していくため、感染力が強く、根絶することが難しいといわれています。地球温暖化の影響で、「さび病」はより発生しやすくなると予想されています。
小規模農家の脆弱さ
現在コーヒー栽培に取り組んでいる農家には大規模なプランテーションではなく、小規模な農家も多くあります。小規模な農家は経済基盤が安定しているとはいえません。もし、温暖化や「さび病」などの影響で収穫量が減少したり、品質が低下したりした場合、コーヒーの栽培を続けられなくなる農家も出てくる可能性も指摘されています。その結果、コーヒーの生産量が減少してしまう可能性があります。
コーヒーの2050年問題への取り組みが進んでいる
この2050年問題を覆すべく、コーヒーにかかわる企業や団体は取り組みを始めています。
地球環境へ配慮の見える化や、農家を経済的に支援する動き
取り組みの一つは、「熱帯雨林保護のための配慮」を消費者に見える化すること。
例えば、私たちは「熱帯雨林保護のための配慮を行っている」コーヒーかどうかを、カエルをモチーフとする「レインフォレスト・アライアンス認証マーク」で確認することができます。
※レインフォレスト・アライアンス認証マーク…「持続可能性の三つの柱(社会・経済・環境)」の強化につながる手法を用いて生産されたことを認証するマーク
「さび病」に強い品種の開発も行われています。
例えば、アラビカ種に比べて病害・虫害に強いといわれるロブスタ種の栽培や、ハイブリッド品種の開発に取り組む企業も。アラビカ種を好む人々にも受け入れられるよう、アラビカ種に近い味や香りを楽しむことができて、病害・虫害にも強い品種の開発が待たれています。

また、農家を経済的に支援する取り組みを行う企業も増えています。
そのひとつがフェアトレード。フェアトレードとは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立をめざす取り組みのことです。
コーヒー農家の人々が、フェアトレードを通して十分に安定した収入を得られるようになれば、周辺環境へ配慮したコーヒー栽培や、将来の状況まで視野に入れた栽培計画の策定や実行ができるようになると期待されます。
私たちが今日からできること

認証ラベルのあるコーヒーを選ぶ
我々が手に取る商品には、様々な認証マークがついています。
中には前述の、熱帯雨林保護に貢献する、「レインフォレスト・アライアンス認証マーク」や、国際的にフェアトレードを認証するラベルもあります。今回の問題解決に関係するマークのついている商品を選び、継続的に購入することで2050年問題を防ぐ一助になるでしょう。
コーヒーの2050年問題に取り組む企業や団体の製品を選ぶ
コーヒーの2050年問題への取り組みについて、各企業や団体がウェブサイトやニュースリリースで公表しています。「この取り組みを応援したい!」と思う企業や団体の製品を選ぶことで、間接的にコーヒーの2050年問題への取り組みに貢献することができます。
まとめ
2050年に、私たちが今飲んでいるコーヒーが飲めなくなるかもしれない「コーヒーの2050年問題」。地球温暖化や病害・虫害、コーヒー農家の経済基盤の問題など、様々な要因があります。コーヒーにかかわる企業や団体も、新しい品種の開発や地球温暖化問題への取り組みを進めています。
私たちも、国際フェアトレード認証ラベルや、レインフォレスト・アライアンス認証マークのあるコーヒーを選ぶことを始め、できることを行っていきましょう。
ライタープロフィール

プロ資格マニア、ライター、起業・集客コンサルタント。
ライターとして金融・経済関係の原稿を多く手がける。次々と改正される法律や、発売される数多くの金融商品が、1人の生活者としての私たちにどのような影響を与えるのか、という点を大切に執筆活動を行う。大阪・泉州の郊外で、農家をリノベーションした住宅を自宅兼オフィスとする。趣味はディンギーヨットに乗ること、資格を取ること、日本の伝統芸能とウルトラマンに関すること。著書は「プロ資格マニアになる方法」「あなたの隣のコンサルタント」「今日から病気も友達」など。
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