映画はインタラクティブに楽しむ時代! 応援上映からマルチエンディングまで

映画はインタラクティブに楽しむ時代! 応援上映からマルチエンディングまで

映画はインタラクティブに楽しむ時代! 応援上映からマルチエンディングまで

登場人物に声援を送りながら映画を鑑賞する応援上映や、スクリーンに表示された選択肢を観客が選ぶことで結末が変わるインタラクティブシネマなど、参加型の上映スタイルが近年増えています。ここではそんな一風変わった映画の楽しみ方について紹介します。

“観る”だけから“一緒に楽しむ”映画へ

”観る”だけから”一緒に楽しむ”映画へ

映画館は鑑賞マナーを守って静かに映画を楽しむ場所。そんなイメージを持つ方も少なくないでしょう。ところが、近年では登場人物に声援を送ったり、ほかの観客と一緒になってテーマ曲を大合唱したりできるイベントが各地で開催され、多くの人に楽しまれています。さらには観客の選択によって結末が変わる、インタラクティブシネマと呼ばれるジャンルの作品まで登場しました。

インタラクティブとは日本語で「相互作用」や「双方向性」と訳され、お互いに作用し合える様を意味します。映画を観て驚いたり感動したりすることはあっても、作品に対して積極的に関わるような楽しみ方はこれまで一般的ではありませんでした。しかし今、声援や選択肢を通じて作品に参加する、インタラクティブな映画が増えています。

ここからは多様化しつつある映画の楽しみ方の代表例をいくつか見ながら、その魅力について紹介していきます。

一体感を味わえる応援上映

一体感を味わえる応援上映

そもそも応援上映ってなに?

応援上映とは、声援を送りながら映画を観ることができる特別上映会のことを指します。また、絶叫上映や声出し上映と呼ばれる場合もあります。スポーツ観戦や音楽ライブのような一体感を味わえるのが特徴です。

通常、映画館で上映中に大きな声を出すのはマナー違反です。しかし、応援上映では登場人物たちのピンチに声援を送ったり、盛り上がりが最高潮に達したところで叫び声を上げたりして楽しむことが推奨されており、劇場によってはコスプレやサイリウム、うちわの持ち込みがOKといったところもあります。

例えば、ディズニー映画『アナと雪の女王』(2014年3月公開)では、挿入歌を合唱するシング・アロング上映が話題になりました。こちらは記憶に新しい方もいるのではないでしょうか?

また、2004年から続くテレビアニメ『プリキュアシリーズ』(東映アニメーション)で馴染みがあるという方もいるかも知れません。同シリーズの劇場版ではペンライトなどのグッズが入場特典としてもらえます。このペンライトは作中にも登場するのですが、特定のシーンでペンライトを振り、観客が一丸となって主人公達を応援するというのが恒例となっています。

上記のように応援上映自体は度々実施されてきましたが、知名度が飛躍的に上がったのは2016年公開の『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(2016年1月公開)がきっかけとされています。同作品はキャラの台詞の後に声援を入れるための間がある、コール&レスポンスが行われるなど、観客の参加を前提として作られており、SNSやメディアでも広く取りあげられました。

最近ではイギリスの人気バンド、Queenを題材にした『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年11月)といった作品でも実施された例もあるように、子ども向けから大人向けまで、今では多くの作品で応援上映が取り入れられています。

タンバリン?マサラ?応援上映には様々な種類がある!

一口に応援上映といっても多くのバリエーションがあります。

一般的なのは前述した、スクリーンに向かって声援を送るスタイルです。純粋に登場人物を応援したり、ときには物語にツッコミを入れたりするなど、観客それぞれが思い思いのかたちで映画を楽しむことができます。なかには映画の予告編に対して発声する人もいるようです。

一方、声を出さないで行う無声応援上映という形式もあります。こちらは2020年8月29日に神奈川県の「あつぎのえいがかんkiki」にて開催されました。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から発声をNGとした上映会でしたが、代わりに一般的な応援上映では使用できないタンバリンや太鼓といった楽器を鳴らしての応援ができるのです。

また、過去には声ではなく文字を使った応援上映が開催されたこともあります。ドワンゴの動画サービス「ニコニコ」のコメント機能を使った上映会で、自分の投稿がリアルタイムでスクリーン上に流れるというものでした。劇場では直前に流れたコメントに返事をするなど、スクリーンを通じてほかの観客とのコミュニケーションも生まれたようです。

※文字応援上映会のイメージ画像
※文字応援上映会のイメージ画像

マサラ上映と呼ばれる応援上映もあり、こちらは日本でインド映画が上映された際に行われることが多いようです。持ち込んだクラッカーを鳴らしたり、紙吹雪をばら撒いたりするのが特徴で、場合によっては登場人物と一緒に踊ることもあるとのこと。ほかの例と比べると、より自由度の高い応援上映の一つといえるかもしれません。

物語に参加するインタラクティブシネマ

物語に参加するインタラクティブシネマ

応援上映では観客のアクションに対し、登場人物が反応を返してくれるわけではありません。どちらかといえば周囲の方達と一緒になって応援しているという、一体感を楽しむ性格が強いといえるでしょう。

一方、観客が物語の内容に深く関われる映画もあります。それらの作品はインタラクティブシネマ、あるいはインタラクティブムービーとも呼ばれています。

冒頭でも説明したように、インタラクティブとはお互いに作用しあえるという意味です。インタラクティブシネマ最大の特徴は、登場人物の次の行動を観客が選択肢のなかから決められるという点です。選んだ行動によってその後の展開や結末は変化していきます。選択肢を通じて映画に参加できるのがインタラクティブシネマの魅力といえます。

インタラクティブシネマの代表例の一つに、2016年に大手サブスクリプションサービスがリリースし、劇場で公開された作品があります。同作品ではなんと約180の選択肢と7つのエンディングが用意されていたそうです。どの選択肢になるかは多数決によって決められ、投票は観客のスマートフォンから行われました。

また、劇場公開用ではありませんが、WOWOWがVRで観るインタラクティブ映画の制作を発表。この作品では選択肢は表示されず、ユーザーがどこを見ているか、目の動きを感知することによって物語が分岐するそうです。観客は無意識のうちにストーリーを選ぶことになり、より主人公になりきった体験が可能となります。

密かに進化している映画の新しい楽しみ方

上映後に誰かと感想を共有することはあっても、鑑賞中は静かに、個人で楽しむのが一般的な映画の鑑賞方法でした。しかし、観客と感情を共有することで一体感を味わえる応援上映や、自分の手にその後の展開が委ねられるマルチエンディングの映画まで、映画の楽しみ方には多様性が生まれています。

映画は観るだけから体験できるものへ。先ほど紹介したVR映画のように、自身が主人公となって物語を追体験する作品も近い将来生まれるかもしれません。


参考:
あつぎのえいがかんkiki「\とんでもねえ待ってたんだ/「コマンドー」無声応援&驚音上映開催決定!」(外部サイト)
ニコニコインフォ「ランボー最新作「ラスト・ブラッド」超・応援上映チケット販売開始!」(外部サイト)
LATE SHIFT(外部サイト)
WOWOW「分岐型マルチエンディングVR映画「HERA」制作プロジェクト」(外部サイト)

ライタープロフィール
笠木 渉太
笠木 渉太
主にマネー系コンテンツ、広告ツールを制作する株式会社ペロンパワークス・プロダクション所属。立教大学卒業後、SE系会社を経て2019年に入社。主にクレジットカードやテック関連のWEBコンテンツ制作や企画立案、紙媒体の編集業務に携わる。

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