宇宙ビッグデータで広がる農業の可能性!農業×テクノロジー「アグリテック」最前線【後編】

宇宙ビッグデータで広がる農業の可能性!農業×テクノロジー「アグリテック」最前線【後編】

宇宙ビッグデータで広がる農業の可能性!農業×テクノロジー「アグリテック」最前線【後編】

農業課題をAIやIoTなどの最新技術によって解決する「アグリテック」。近年では、宇宙ビッグデータを農業に活用する動きも見られています。今回は、JAXAベンチャー「天地人」にインタビュー。「宇宙×農業」の知られざる可能性についてご紹介します。

JAXA職員と農業IoT分野に知見のある開発者によって、2019年設立されたスタートアップ「天地人」。宇宙ビッグデータ(人工衛星から得た地球に関するデータ)をもとに農作物の最適地を探す取り組みなどを展開しています。今回は、天地人事業開発マネージャー、浦部雄平さんに宇宙ビッグデータとアグリテックの可能性についてお話をうかがいました。

「宇宙×農業」の可能性

――宇宙ビッグデータによって、農業の課題が解決する可能性は大きいと考えられますか?
現在、宇宙と農業のかけ合わせは第2フェーズに入っています。第1フェーズは2010年〜2015年で、アメリカなどの巨大企業農地を宇宙データから管理するというブームが起こっていました。かつて衛星は、NASAやJAXAなど国の機関が所有していましたが、ここ数年で多くの民間会社も上げています。データ精度の高まりとともに、農業管理もハイレベルになっているため、第2フェーズに入ったと考えられています。

気温の上昇や災害の増加は農業に多大な影響を与えるものであり、どう回避するのかが世界の農業課題です。衛星で取得した気温、雨量、日射量などのデータを利用することで、気候変動への備えも可能になります。今では世界中の企業や政府がこのデータを活用しています。

日本では農業従事者の高齢化が進んでおり、耕作放棄地も増加傾向です。数年後には、団塊の世代の引退によってさらに農業人口が減少すると想定されています。その課題解決として、宇宙データの活用による農業規模の拡大や収益性の改善が期待されているのです。

――宇宙データによって具体的にどんなことが実現できるのでしょうか?
Google Earthのような衛星写真とAIをかけ合わせることで、土地の使用用途を知ることができます。「宇宙から地球を見ている」ということが大きなポイントですね。
さらに、畑の野菜が活性化しているか枯れているかなど、目に見えない波長のデータも取得することができます。温度が高くなりそうであれば水をまく、最適な時期に収穫するなど、状況に適した対処を講じることが可能になるのです。

――宇宙データを利用することで、本来耕地として適さない地域で農作物を育てられる可能性もあるのですか?
もちろんです。例えば、ブドウ産地はある一定の緯度周辺とこれまで限定されていましたが、だんだん北上しています。もちろん、農家の方の努力によるところが大きいですが、データによって栽培に最適な場所が瞬時に見つけられるようになれば良いですね。また、気候変動でりんごの産地にも変化が見られていますが、宇宙データによって「他の果物にした方がいい」「他の品種の方がその土地に最適」という提案も可能になるかと。収穫量が落ちてからではなく、事前にこうなりますよというお手伝いもさせていただきたいと思います。

宇宙データを活用した事例

――宇宙データをもとに耕作最適地を発見した事例があれば教えてください
ニュージーランドの企業と組んで、日本国内でキウイ栽培に最適な場所を探すというプロジェクトが現在進行中です。キウイのほとんどが南半球で生産されていますが、北半球で栽培可能になれば流通時期も長くなります。宇宙データの活用により、ニュージーランドに近い環境を探すことができるのです。
また日本の米卸し企業と一緒に、ある品種のお米の栽培地を探すという取り組みも行っています。最適地を特定することで、栽培・収穫のパフォーマンス向上を狙うものです。

宇宙ビッグデータの可能性

――宇宙データを農業以外の分野で活用できる可能性はありますか?
様々な可能性がありますが、その一つが不動産への活用です。宇宙データによって日照量などの情報がわかるので、不動産売買時に役立てることができます。不動産会社、購入者双方にメリットがあるといえるでしょう。こちらは現在プロジェクトを進めている段階です。昨年、大雨によってタワーマンションが浸水するというニュースがありましたが、そのような災害リスクに関する情報提供も可能になります。日照量や緑の多さなどの情報を活用すれば、住みたい地域を探しやすくなることでしょう。

さらに、コロナ禍の影響でリモートワークが浸透している昨今では、住む場所に制限がなくなりつつあります。よって個人の志向に合わせた場所に住むという動きは今後増えてくるのではないでしょうか。宇宙データの活用で、自分では思いつかないような場所に住む、という機会も増えてくるかもしれません。

――宇宙データ活用の背景にはAIの発達によるところが大きいですか?
その通りです。さらAIによって土地の使用用途だけでなく、工場の稼働状況や森林火災の予測も把握することができます。アメリカの森林火災が近年問題となっていますが、AIを活用すれば、燃えている範囲、燃え広がる範囲が判明するので消火の効率性もアップします。データの使い道が格段に広がっているのです。

さらに宇宙データとAIをかけ合わせることで、アフリカ地域の水の確保や適切な管理法などにも活用することができます。ゆくゆくは世界の課題となっている食料問題の解決につながるとも考えられます。

――個人が宇宙データを気軽に利用できる日も近いでしょうか?
まだまだ先になりそうですが、天地人としてはその方向性で考えています。シンプルにクリック一つでデータを確認したり、世界地図から知りたい情報を簡単に検索できるようなシステムを構築したいですね。

今後の展望

――天地人の今後の展望をお聞かせください
我々が掲げている「宇宙ビッグデータを使うことで、世の中の文明活動を最適化する」というミッションのように、地球のポテンシャルを最大化させたいですね。それにはまず自然環境と農業が重要。また先ほどお話ししたように、不動産など土地の有効利用も寄与できればと思っています。

――日本と世界の農業の未来像はどうなるとお考えですか?
地球の貴重な資源を搾取することなく、最大限に発揮させることが農業のめざすべき方向性なのではないでしょうか。その目標に向かって我々も貢献できればと考えております。

宇宙から農業の最適地を探すという画期的手法を推進する「天地人」。ビッグデータは我々の食生活にも深く影響をもたらし、未来にさらなる広がりを見せてくれそうです。

この人に聞きました

浦部雄平さん
株式会社天地人・事業開発マネージャー。
日本でコンサルティング会社勤務を経て、楽天に転職。スペインの大学に留学後、現地スタートアップで経験を積み、天地人にジョイン。現在パリ在住。ヨーロッパやアメリカの宇宙機関や宇宙ベンチャーとのアライアンス締結などに従事。農業や宇宙関係のイベントに積極的に参加している。

ライタープロフィール
松本 奈穂子
松本 奈穂子
大学卒業後、メーカー、ITベンチャーを経てフリーランスライターとして活動スタート。雑誌、書籍、広告媒体、記事広告、Web、フリーペーパーなどメディア全般を制作。ライフスタイル、旅、グルメ、金融、教育、家電、イベント等の記事を執筆中。渡航国は現在50ヵ国。

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