アグリテックって?農業×テクノロジー「アグリテック」最前線【前編】

アグリテックって?農業×テクノロジー「アグリテック」最前線【前編】

アグリテックって?農業×テクノロジー「アグリテック」最前線【前編】

高齢化や人手不足が課題とされる日本の農業。これを解決するために大きなカギとなるのが、AIやビッグデータなどの最新テクノロジーを活用した「アグリテック」。今回は、農業の新たな可能性を切り開くアグリテックについて事例を用いながらご紹介します。

農業人口の減少や高齢化が進み、厳しい局面を迎えつつある日本の農業経営。農林水産省の発表によれば、2019年の農業就業人口は約168万人。直近5年間で4分の1も減少し、平均年齢も2018年時点で66.8歳と高齢化が進んでいます。こうした問題を打破するため近年注目されているのが、ロボット技術や、AIなどの先端技術を活用する「アグリテック」です。今回は、日本におけるアグリテックの最前線について詳しくお伝えしましょう。

アグリテックとは?

「アグリテック(AgriTech)」とは農業(Agriculture)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語。これまでの農業領域における課題を、AIやIoT、ドローン、ビッグデータなどの最新テクノロジーを導入することによって解決するというものです。ビジネスチャンスの多い成長分野でもあり、近年では大企業だけではなく、国内外のベンチャー企業も参入するという傾向に。このアグリテックの代表的な試みとしては「農業従事者の働き方改善」と「ノウハウの可視化と分析」の2つに分けることができます。

農業従事者の働き方改善

農業従事者や農具の代わりとしてロボットを用いることで、コストを抑えつつ効率的に収穫量を増やすことができます。さらにIoT機器とかけ合わせることで、農業従事者の働き方の見直しにも大きく寄与します。

例えば畑や田んぼにセンサーを設置すれば、温度や湿度などのデータ計測が可能に。一定の基準値を超過した際に、インターネットを通じて自動通知されることで、従来人の手によってなされていた作業が省略できるのです。

さらにドローンによる農薬の自動散布、AIを用いた農作物の育成状況の確認など、様々なテクノロジーによって農業の効率化が実現。日本が抱える農業従事者不足という問題の解決も期待されています。

ノウハウの可視化と分析

収穫時期の見極めや農地の土壌分析など、従来の農業生産においては熟練農家の知識や勘に頼っていたという傾向にありました。さらに技術習得に適したデータがなかったため、後継者が育ちづらい環境であったともいえます。

そこで、AIやIoT、ビッグデータを活用し、熟練農家の知識や勘の可視化を行うことで、重要なノウハウが就労して間もない農家や若手農家に継承できるようになってきています。農作物の生育状況なども正確に分析できるため、生産性も大幅に向上し、新たな農業ビジネスや農業イノベーションが実現する可能性も高まるといえるでしょう。

ノウハウの可視化と分析

スマート農業実証プロジェクト

農林水産省ではアグリテックと同義であるスマート農業を実証する「スマート農業実証プロジェクト」を昨年からスタート。アグリテックの社会実装を加速するべく、先端テクノロジーを生産現場に導入して技術実証を行うというものです。ここではいくつかの事例を取りあげたいと思います。

事例:山口県の米農家団体

課題:水稲作業の省力化や品質の向上。栽培管理データの共有やノウハウを継承できる体制づくりなど。

使用技術:GPSブロードキャスタ、自動操舵システム、システム連携トラクタ、直進田植機、可変施肥田植機、ラジコン除草ボート、ラジコン除草機、収量コンバイン

不整形な水田や傾斜が急な法面(のりめん)が目立つ中山間地域において、安全に栽培管理・作業が行えるようにスマート農業技術を導入。法人間における栽培管理データの共有化や人材育成のための研修体制を構築し「集落営農法人連合体」の形成を進めるという取り組み。

事例:宮崎県の野菜農家

課題: 国産ニーズが高まる業務用野菜の安定供給基地としての産地づくり。若手農家の収量・品質の向上など。

使用技術:生産管理システムの改良、データの蓄積・解析等、最先端農機を活用した省力化、ドローンを活用した技術体系の確立、環境センサーの実証、収穫機改良と現場実証

蓄積された過去データと環境センサーやドローン等のセンシングによるデータをAIで分析し、生産から出荷までの各工程管理の強化を目指すという取り組み。機械化一貫体系による分業化と省力化、地域の生産基盤維持拡大が目標。

農業IoTソリューション「e-kakashi」

科学的農業の実現と、農業のスマート化を狙うIoTソリューションとして「e-kakashi」も注目を集めています。ソフトバンクグループの「PSソリューションズ」が提供するサービスで、IoTやビッグデータ、AIなどの先端技術を用いて圃場(ほじょう)の温度や日射量、土壌内の水分量、CO2やEC(電気伝導度)を始めとする環境情報を収集。そこから得られたデータをもとに課題解決をナビゲートするというもの。熟練農家の勘や経験に基づく知見と科学的な知見をかけ合わせることで、精密な農業をめざします。

事例:福岡県のいちご農家

課題:若手の栽培技術向上

「あまおう」の栽培が盛んな福岡県宗像市は、数十名のいちご農家に「e-kakashi」を導入。IoTの活用でビニールハウス内の地温や日射量の自動取得、さらに熟練農家の生産データの可視化を実現。若手農家による必要作業の把握も容易になり、結果として10アールあたりの平均で約80万円の増収に。栽培に必要なデータが専用アプリケーションで場所を選ばずに閲覧できるため、効率性も向上。いちご栽培は長年の経験に頼っていた傾向にあったものの、データに基づいた適切な農作業が実現。さらに指導員が現地に行かなければ状況が把握できないという問題があったものの「e-kakashi」導入により、遠隔でもリアルタイムに農業指導が可能に。

事例:京都府の米農家

課題:熟練農家の高齢化により、稲作ノウハウが途絶える不安を解決したい。

京都府北部の与謝野町では、同町産コシヒカリを栽培するベテラン農家の圃場に、「e-kakashi」を設置。温湿度や日射量、土壌水分量などの環境データを取得。ベテラン農家が実践する中干しや稲刈りなどのタイミングを、データと紐付けた栽培マニュアルの作成が実現。新規就農者が速やかに技術を習得できる環境の整備に寄与したとのこと。農作業実施時期の判断を科学的に裏付ける情報として活用され、センサーで得た数値データをもとに、各農作業の最適な管理も可能に。

宇宙ビッグデータを農業に活用

近年では宇宙から取得したビッグデータを農業に活用するという動きも顕著となっています。2019年に創立したJAXAベンチャー「天地人」では、宇宙ビッグデータ(人工衛星から得た地球に関するデータ)を基に農作物の最適地を探す取り組みを展開。衛星写真とAIのかけ合わせで、土地の使用用途を正確に把握することができるのです。

例えば、農地の野菜が活性化しているか、枯れ始めていないかなどという目に見えない波長のデータも取得可能。温度が高くなりそうであれば水をまく、最適な時期に収穫するなど、状況に適した対処が柔軟にできるのも宇宙ビッグデータ活用の特筆すべきところです。農業規模の拡大や収益性の改善という観点で近年話題を集めています。

宇宙ビッグデータを農業に活用

後編では、宇宙データをもとに耕作最適地を探索するJAXAベンチャー「天地人」へのインタビューをご紹介。宇宙ビッグデータと農業の可能性などをお伝えいたします。

ライタープロフィール
松本 奈穂子
松本 奈穂子
大学卒業後、メーカー、ITベンチャーを経てフリーランスライターとして活動スタート。雑誌、書籍、広告媒体、記事広告、Web、フリーペーパーなどメディア全般を制作。ライフスタイル、旅、グルメ、金融、教育、家電、イベント等の記事を執筆中。渡航国は現在50ヵ国。

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