オンライン飲みにガチャ…「こち亀」の未来予言! 両さんの発明が実現したものは?

オンライン飲みにガチャ…「こち亀」の未来予言! 両さんの発明が実現したものは?

オンライン飲みにガチャ…「こち亀」の未来予言! 両さんの発明が実現したものは?

1976年に連載を開始し、以降40年間にわたり数々のエピソードを描いてきた『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。当時ギャグとして描かれていた発想や発明品のなかには、連載から十数年経って実現した例がいくつかあります。ここではその一部を紹介します。

『こち亀』は10年以上先の未来を予測していた

『こち亀』は10年以上先の未来を予測していた

秋本治氏の作品、「こち亀」こと『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は1976年から2016年まで40年もの間『週刊少年ジャンプ』で連載された国民的漫画です。改めて説明しておくと、主人公は両さんの愛称で知られる両津勘吉。警察官である両さんと周囲の人物との騒動を描いたギャグ漫画です。

しかし、ギャグ漫画でありながら、こち亀には当時の最先端テクノロジーや流行を取りあげたエピソードも多く、そのたびに時代を先取りした奇抜な発明品がいくつも描かれてきました。なかにはお掃除ロボット(第19巻第180話)のようにその後製品化されて身近に使われるようになった製品や技術もあり、連載時にもその予言の的確さが読者の間で話題にあがることもありました。

ではそのほか、作中で描かれていたアイデアで実用化したモノは何があるのでしょうか。いくつか実例を見ていきましょう。

「こち亀」が予言していた3つの現実

オンライン飲み会

30年近く前、こち亀はテレビ電話によるオンライン飲み会を予言していました。

今でこそリモートワーク急増で一般的になりつつあるオンライン会議や飲み会ですが、こちらのエピソードが『週刊少年ジャンプ』に掲載されたのは1988年。まだ携帯電話すら普及していない頃で、パソコンやインターネットが家庭に広まるのもさらに先のこと。今のようにほとんどの人が自分の通信機器を持っている時代ではありませんでした。

ではどのようにしてオンライン会議を行っていたのでしょう。作中では一対のテレビ電話の片方をそれぞれのユーザーに、もう一方を一箇所に集めてオンライン会議を実現しています。テレビ電話同士を映さなくてはいけなかったので、オンライン会議なのにわざわざ集合場所を用意するという手間が必要でした。

©秋本治・アトリエびーだま/集英社(第59巻574話)
©秋本治・アトリエびーだま/集英社(第59巻574話)

集めたテレビを通して行うオンライン飲み会。当時はまだブラウン管テレビが主流でした。

一方、ビデオ会議ならではのシステムをかなりの精度で予言している場面も。

作中のビデオ会議では背景パネルや洋服付きパネルのレンタルも行われていました。パネルは顔の部分がくり抜かれているため、穴から顔を出せば実際の部屋や格好を隠しながら通話ができます。背景を変えて通話するこの仕組み、私たちが使っているオンライン会議ツールによく似ていませんか? 実物のパネルと仮想のデータという違いはありますが、自由に背景を設定するというアイデアは30年前に秋本氏が考案していたのです。

パネルを使って生活感を隠す風景は現在のオンライン会議でも見られます。
©秋本治・アトリエびーだま/集英社(第59巻574話)
パネルを使って生活感を隠す風景は現在のオンライン会議でも見られます。

振動を利用した発電システム

光や風といった自然エネルギーや人の動きなど、周りの環境のわずかな力を電力に変換する技術は「エナジーハーベスティング(環境発電)」と呼びます。考え方としては古くからあるものですが、こち亀ではいち早く実用化のアイデアを描いていました。

上のページが掲載されている回では、新宿駅の回転ドアや駅の階段の振動を利用した発電システムが考案されています。両さんが一儲けをたくらむために登場したこれらの発明ですが、実はその後2006年にJR東日本によって実証実験が行われています。「床発電システム」と名付けられた当時の実証実験では改札を通る際の振動のエネルギーで発電が検証されたようですが、作中とは違って十分な電力を確保できなかったため、採用は見送りになったようです。

通勤する人から発生するエネルギーで発電を試みる両さん。実用化はまだされていません。
©秋本治・アトリエびーだま/集英社(第72巻709話)
通勤する人から発生するエネルギーで発電を試みる両さん。実用化はまだされていません。

ちなみに、1990年に掲載された上記のエピソードでは太陽光や水力、人力などあらゆる手段で発電した電力を電力会社に売って利益を得ようとします。国内で売電事業が活発化していくのは2012年の固定価格買取制度(FIT法)以降とされていますから、やはり先見性の高さがうかがえます。

売電が電力会社の自主的な取り組みだった頃のエピソード。
©秋本治・アトリエびーだま/集英社(第72巻709話)
売電が電力会社の自主的な取り組みだった頃のエピソード。

ゲーム中の課金システム

インターネットが一般に普及したきっかけは、1995年にMicrosoftが発売したWindows95。1990年代後半、個人によるウェブサイトの開設や掲示板(BBS)の流行などインターネットが広く利用され始めた当時、秋本氏はなんと20年近くも先の未来で問題視されるようになった課金システムについて取りあげていました。

1996年に掲載されたエピソードでは、登場人物がパソコンの恋愛シミュレーションゲームで女性に気に入ってもらおうと、クレジットカードを登録してお金をどんどん注ぎ込んでしまいます。

©秋本治・アトリエびーだま/集英社(第98巻第957話)
©秋本治・アトリエびーだま/集英社(第98巻第957話)

2000年代後半からスマホの普及とともに流行したオンラインゲームやソーシャルゲームでは、課金システムがあたり前のようにユーザーの間で定着しました。

一方で、一般的に攻略を有利に進めるレアアイテムを購入したり、狙いのアイテムを手に入れるための有料ガチャ(くじ引き)を行う点は「コンプリートガチャ」として消費者庁が警鐘を鳴らす社会問題にまで発展しました。こち亀の作中ではゲーム内の課金システムはコミカルに描かれていましたが、それだけでなく両さんによってその危険性まで指摘していたのは興味深いところです。

当時から高額課金の危険性について言及していた。
©秋本治・アトリエびーだま/集英社(第98巻第957話)
当時から高額課金の危険性について言及していた。

想像は次々と現実になっていく

漫画や小説、映画などで想像されたテクノロジーや社会の仕組みが技術の進歩で実現する例は少なくありません。IoT家電やスマホの音声認識など、今やあたり前となっているAIの生活サポートも一昔前までは空想上の存在だったはずです。「こち亀」でテレビ電話による不便なオンライン会議がネット環境の発達によって実用化されたように、フィクションや冗談と思われがちなアイデアも、そう遠くない将来に実現するかもしれません。

ライタープロフィール
笠木 渉太
笠木 渉太
主にマネー系コンテンツ、広告ツールを制作する株式会社ペロンパワークス・プロダクション所属。立教大学卒業後、SE系会社を経て2019年に入社。主にクレジットカードやテック関連のWEBコンテンツ制作や企画立案、紙媒体の編集業務に携わる。

笠木 渉太の記事一覧はこちら

RECOMMEND
オススメ情報

RANKING
ランキング