「監視資本主義」への警鐘。生活のデジタル化を考える

「監視資本主義」への警鐘。生活のデジタル化を考える

「監視資本主義」への警鐘。生活のデジタル化を考える

インターネットを介して、様々な情報を無料で入手できる時代になりましたが、無料であることと引き換えに、私たちの情報が利用されていることはご存知でしょうか? 近年ではユーザーの情報を活用する「監視資本主義」という言葉も囁かれています。

「監視資本主義」とは、GoogleとFacebookが開発、主導する新しい情報社会

「監視資本主義」とは、GoogleとFacebookが開発、主導する新しい情報社会

まず、「監視資本主義」とはどのようなものなのか、ユーザーの情報を使った従来のターゲティング広告などとどう違うのか、見ていきましょう。

監視資本主義という言葉は、ハーバード大学名誉教授であるShoshana Zuboff氏の著書「The Age of Surveillance Capitalism(監視資本主義の時代)」で読者に警鐘を鳴らしたことで注目を浴びました。GoogleとFacebookという多くの人に身近なサービスを名指しし、その行動様式を批判的に解説した本書は、ITに携わる人のみならず、社会学や経済学など幅広い識者に衝撃を与えました。

Zuboff氏は自著において、産業革命の延長上にあった産業資本主義との対比で、監視資本主義を説明しています。産業資本主義においては、自然界の素材を興行的に加工して商品にしていました。一方、監視資本主義においては、人間自身が素材であり、人間が持つ情報を機械的に加工して商品とします。分かりやすくいえば、あなたがどのような人で、どのようにインターネットを使っているか情報を収集し、分析した結果を、広告を出したい企業に販売して利益を得ています。

この説明だけでは、ユーザーの属性や最近の検索結果を分析して表示されるターゲティング広告と大差なく思えるでしょう。確かにターゲティング広告でもユーザーの情報を収集し、分析し、属性ごとに分類します。そして、興味を持っているであろうと思われる商品の広告を表示することで、広告の効果を高めています。ユーザーとしては、興味のない広告が表示される回数が減るというメリットがありました。ここで重要なことは、あくまでも「この商品に興味があるだろう」と想定して広告を表示しているということです。

ターゲティング広告よりも精度の高い広告を出すにはどうすればよいでしょうか。GoogleやFacebookが出した答えは、「この商品に興味があるだろう」と想定するだけではなく、実際にその商品を買うよう仕向けるということでした。たとえばポケモンGOに興味がある人に、ポケモンGOのイベント情報と、その付近にあるカフェの広告を見せれば、ユーザーを目的のカフェに誘導できます。想定の的中率を高めるために、ユーザーを想定通りの行動に導いているのです。

無闇に怖がるのではなく、実態を知って上手につきあおう

無闇に怖がるのではなく、実態を知って上手につきあおう

「ユーザー自身が素材である」、「サービスを使う人を監視する」、などと少し怖い話に聞こえるかもしれません。監視され、情報を集められ、分析されたうえに次の行動を誘導されるという話ですから、恐ろしく感じる人がいるのも当然かと思います。しかしディストピアを描いたSF映画ではなく、いま、現実の社会で既に起こっていることです。私たちはそうした現実を理解し、受け入れたうえで、これからの時代を生きていかなくてはなりません。

人が何かを恐れる理由の一つに、得体が知れない、実態が分からないということがあります。監視資本主義に不気味さを感じるのも、自分の情報がどのように収集され、どのように利用されているか分からないからではないでしょうか。そうであれば、まずすべきことは実態を理解することです。特に分かりやすいGoogleやFacebookの広告を観察してみると、自分がどのように監視され、オンラインでトラッキングされているか、なんとなく肌で感じることができると思います。分かってくれば、恐ろしさも減るかもしれません。

情報を勝手に利用されたくないからと、インターネットから離れて生活することは現実的ではありません。街中にあふれるあらゆる機械が、インターネットを通じてあなたの情報を集めています。スマートフォン、電子決済、公共交通機関、自動販売機でさえ、今は利用者の属性データを収集しています。そして、それぞれが有利になるよう、オンラインだけではなく現実のあなたの行動にまで影響を与えようとしています。

しかし注意しておきたいことは、監視資本主義は完全な敵ではないということです。監視資本主義によって一部のインターネットサービスは莫大な利益を得ているのは事実です。それに対してあなたが何かを失っている訳ではないのです。むしろ、オンラインサービスを使ううえではメリットさえあります。

最後に、監視資本主義社会と上手につきあっていくために気をつけるべきこと、監視資本主義で消費者が得られるメリットについてまとめてみます。

メリットとデメリットを考えながら、監視資本主義時代を生きよう

メリットとデメリットを考えながら、監視資本主義時代を生きよう

ユーザーの情報を収集して活用する流れは、今後のオンラインビジネスにおいて一般的になっていくでしょう。そのような時代の消費者のメリットとデメリットを考えてみましょう。

監視資本主義社会のメリット

・データが集まれば集まるほど、そのサービスはユーザーの意向に沿ったものとして進化するでしょう。
・ユーザー情報を効果的に収益化できるようになり、無料やフリーミアムモデルでも使いやすいサービスが生まれやすくなることが期待されます。
・興味のない広告は減っていくでしょう。

監視資本主義社会のデメリット

・あなたの行動を誘導しようとする情報が多くなっていきます。
・広告やPR記事なども、特定のバイアスのかかった情報が増えるかもしれません。

デメリットを避けるためには、オンラインサービス、特に無料で利用できるサービスにおいて提供される情報はよく考えながら読む習慣を身につけるといいでしょう。情報にバイアスがかかっていることを考慮せず、何でも鵜呑みにする姿勢はよくありません。これは監視資本主義社会でなくても、SNSのデマに踊らされたりしないために気をつけるべきポイントです。

逆に、うまく活用できればユーザーにもメリットがあります。そもそもあなたの情報を分析した結果に基づいて表示される広告や記事は、あなたの嗜好に合っているものが多いはずです。そのバイアスを理解したうえで情報を受け取り、本当に自分に合うかどうか考えながら読むことができれば、新しい発見もあるかもしれません。

読者として情報を活用することを意識付け、メリットを生かしながら監視資本主義時代を生きていきたいものです。

ライタープロフィール
重森 大
重森 大
中古車雑誌の広告制作、記事制作を経てライターとして独立。自動車関連のほか、携帯電話からエンタープライズまでIT方面の広告や記事を多く執筆。趣味は激安車の購入で、オークションサイトを物色する日々。
ITを活用した地方活性化に興味を寄せており、キャンピングカーで日本国内を走り回っている。

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