2027年に民間宇宙旅行を実現!SPACE WALKERの本気度

2027年に民間宇宙旅行を実現!SPACE WALKERの本気度

2027年に民間宇宙旅行を実現!SPACE WALKERの本気度

アポロ11号が月面着陸を成功させたのが1969年。あれから50年経った今、人類は自由な旅の領域を宇宙に広げようとしています。往還型宇宙ロケットの開発を手がける株式会社SPACE WALKERで、民間宇宙旅行の可能性について聞きました。

メイド・イン・ジャパンのスペースプレーンを開発

近い将来、人類は気軽に月や火星への旅行を楽しむようになる。そんなSFのような言葉もどこか現実味を帯びてきたような気がします。海外では、テスラCEOのイーロン・マスク氏が手がけるスペースXやリチャード・ブランソン氏が設立したヴァージン・ギャラクティック、AmazonのCEOジェフ・ペゾス氏が設立したブルーオリジンなど、多くの企業が民間宇宙旅行の実現に向け、開発競争を繰り広げています。

そんな中、日本発の宇宙ベンチャー・株式会社SPACE WALKERが、東京理科大学と共同で開発を進める往還型宇宙ロケットの開発に注目が集まっています。研究・開発の指揮を執るのは、同社のCTO(最高技術責任者)を勤める東京理科大学理工学部の米本浩一教授です。

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1980年代から日本のロケット開発に取り組んできた米本浩一教授

「私は、1980年代から『スペースプレーン』と呼ばれる飛行機のような感覚で宇宙を往復できる宇宙船の開発に携わってきました。これは人を乗せて宇宙に行って、帰ってくることを目的とした宇宙船で、世界中の研究者・技術者がその実現をめざして、技術開発に取り組んできたのです。宇宙ビジネスが注目を集める今、有人の スペースプレーンがついに実現されようとしています。産学共同で、メイド・イン・ジャパンのスペースプレーンを実現したいと思っています」

米本教授は、これまで宇宙科学研究所(現JAXA)の有翼飛翔体HIMESや航空宇宙技術研究所と宇宙開発事業団(いずれも現JAXA)が主導した宇宙往還技術試験機HOPE-Xなど、数々の国家的宇宙プロジェクトに携わってきたこの分野のエキスパートです。これまでのネットワークを活かし、東京理科大学に加え、IHI、川崎重工業、JAXAなどが連携するまさにオールジャパンの研究チームを築き上げました。

1回数百万円で宇宙旅行ができる未来を実現する

1回数百万円で宇宙旅行ができる未来を実現する
米本教授が開発を手がけるWIRES(WInged REusable Sounding rocket)と名付けられたスペースプレーンの打ち上げ実験の様子

米本教授が手がけるスペースプレーンとは、いわゆる「有翼ロケット」を指します。垂直に打ち上げるペンシル型の使い捨てロケットと違い、飛行機のような翼があり、自由自在に飛行を制御できるのが特徴だと言います。

「有翼ロケットとは、翼の揚力を使って飛行を制御し、再び着陸することができる。つまり、再使用できる宇宙船です。飛行機の耐用年数は、20~30年といわれていて、2万回程度の飛行が可能です。一方、現状の宇宙ロケットは、使い捨てが基本。そのため、H-IIA、Bロケットでも100億円以上の莫大な打ち上げ費用がかかります。その点、有翼ロケットは再使用できるので、一度の打ち上げにかかるコストを抑えることができます。いずれは1回数百万円で宇宙旅行ができる未来を実現するつもりです」

SPACE WALKERでは、2027年にスペースプレーンによる宇宙旅行を実現するために準備を進めています。その前段階として、2022年の科学実験用スペースプレーンの打ち上げ、2024年に小型衛星打上用スペースプレーンの打ち上げを経て、2027年には全長約16メートル重さ18.7トンの有人スペースプレーンに乗員2名、乗客6名を乗せて、高度120キロメートルまで打ち上げる予定です。乗客は約3分間、無重量の状態を体験し、丸く青い地球を眺めることができるといいます。

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SPACE WALKERが描く将来のビジョン。2027年に有人スペースプレーン打ち上げへ

人類は「いい宇宙人」をめざす時代へ!

アポロ11号でニール・アームストロングが月面着陸に成功したのが1969年。あれから50年で、民間人の月旅行が現実になろうとしています。ZOZOの創業者である前澤友作氏のスペースXの宇宙船を使った月旅行への参加表明も話題になりました。月旅行があたり前になれば、次は火星への旅も実現されるかもしれません。米本教授は、これからの50年でどのような未来がやってくると考えているのでしょうか。

「次の50年で人類が生存圏を宇宙に拡大していくことは間違いありません。月や火星に着陸しているのはあたり前で、なんなら火星に住んでいる人がいても不思議はありません。今、リモートワークが話題ですが、将来は、在宅勤務はおろか、在宇宙勤務をしている人がいるかもしれません。地球から火星まで、宇宙船の性能が向上してもやはり2年近くかかるので、その間、宇宙船からリモートワークなんていいじゃないですか。月や火星も生存圏になれば、国家という感覚も変わるでしょう。世界中の人が、地球人として『ONE市民』になれば、紛争もなくなるかもしれません。宇宙開発によって、人類は次のステージに行くことができます。『いい宇宙人』として、地球だけでなく、宇宙全体に貢献していかなければいけないのです」

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50年後には火星でリモートワークをする時代もやってくる!?

現在、ロケットや人工衛星に代表される宇宙開発の分野は、アメリカ、ヨーロッパ諸国だけでなく、中国やインドも台頭してきています。米本先生は、こうした開発競争は研究にとって必要不可欠なものであり、ここからより知的なものが得られると考えています。

宇宙開発にかかわる分野は、機械工学や航空工学だけでなく、電気電子工学、化学、物理学、土木工学、環境工学、天文学、経済学など多岐に渡ります。宇宙往還機開発で培った研究ノウハウは、人工衛星や宇宙メガソーラー開発、無重量状態での医薬品開発など、多分野に広がっていく可能性も大いにあります。つまり、宇宙開発競争は、日本全体の研究力強化にもつながるのです。

「かつてGMやフォードをモデルにして、ものづくりに励んだ日本の自動車メーカーが、今では世界のトップ企業の仲間入りをしています。スペースXと比べれば、SPACE WALKERはまだまだ小さい会社です。しかし、宇宙分野においてもスポーツカー市場もあれば、軽トラ市場もあるわけで、SPACE WALKERの宇宙往還機にも必ずニーズがあります。必要なのは、大きなビジョンを描くこと。そして、成功に向けて戦うことです。2027年に、メイド・イン・ジャパンのスペースプレーンを必ず実現します!」

この人に聞きました
米本浩一
株式会社SPACE WALKER取締役CTO
東京理科大学理工学部機械工学科 教授
米本浩一さん

東京大学大学院工学研究科機械工学専攻修士課程修了。工学博士。川崎重工業勤務時代に文部省宇宙科学研究所有翼飛翔体HIMES、その後航空宇宙技術研究所と宇宙開発事業団の宇宙往還技術試験機HOPE-Xの研究開発に従事。次期固定翼哨戒機P-Xの開発を経て、2005年より九州工業大学大学院工学研究院機械知能工学研究系宇宙工学部門教授。2019年4月より現職。
ライタープロフィール
丸茂 健一
丸茂 健一
編集者・ライター。1973年生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、旅行雑誌編集部勤務を経て、広告制作会社で教育系・企業系の媒体制作を手がける。2010年に独立し、株式会社ミニマルを設立。ビジネス全般、大学教育、海外旅行の取材が多い。

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