教育の未来―AI時代に求められる力とそれを育む教育とは―

教育の未来―AI時代に求められる力とそれを育む教育とは―

教育の未来―AI時代に求められる力とそれを育む教育とは―

未来の教室は、どうなっているのでしょう? 紙の教科書はなくなり、タブレット端末で授業を受ける子供たち・・・・・・。そんな未来像が現実になろうとしています。AI時代の新しい教育について、次世代を担う教材開発のプロに聞きました。

求められるのは「圧倒的能動思考」

AI時代が到来し、教育現場も大きく変わろうとしています。10〜20年以内に、現在ある多くの仕事がAIやロボットによって代替される可能性が高いと言われる昨今。未来の子供たちにどのような教育を受けさせればいいのでしょうか?

AI型タブレット教材の開発を手がける株式会社COMPASSのファウンダー、神野元基さんは、現在の日本の教育現場をこのように見ています。

未来想像WEBマガジン
株式会社COMPASSのファウンダー 神野元基さん

「理解度や興味・関心の異なる生徒に同じ授業を一方的に受けさせて、5教科7科目の一斉テストを課すという現在の横並びの能力評価システムは、これからのAI時代にフィットしていないのは明らかです。私は、AI時代を生き抜くために求められるのは、『圧倒的能動思考』だと考えます。他者や周囲の環境に依存することなく、自分にしかできない仕事や社会における役割を責任持ってつくり出せる人が次世代を担っていくことになるでしょう。こういう人材を育てるための教育や教材とはどのようなものか親子で考えていく必要があります」

「シンギュラリティ」に触れ、教育の重要性を確信

AI研究の世界的権威レイ・カーツワイル博士は、AIが人類史上初めて人間よりも賢くなる 「シンギュラリティ(技術的特異点)」が2045年に訪れると予測しています。

「2045年には、人工知能が新しい人工知能を生み出すようになり、もはや人間には未来予測ができなくなるほどのスピードで社会が変革していく」

これは、カーツワイル博士が提唱し、多くのAI研究者が賛同している考え方。20代前半の頃、アメリカ西海岸のシリコンバレーで起業に挑戦していた神野さんは、「シンギュラリティ」という概念に触れ、子供たちが未来を生き抜くための教育の重要性を確信します。そして、自ら未来について考える・教える塾を開業しますが、そこで直面したのは子供たちは宿題・部活・受験に追われ未来のことを考える余裕はないという問題でした。そこで、勉強を効率化するために自ら開発に乗り出したのが、AIを搭載した次世代の教材「Qubena(キュビナ)」でした。

学習が効率化され、定期テストがなくなる!?

「Qubenaは、タブレット端末を使ったAI型教材です。子供たち一人ひとりの理解度・習熟度に合わせて、AIが自動で学習し、出題内容をカスタマイズしていきます。私が経営する学習塾では、Qubenaを用いて中学1年生の数学を平均32時間で修了できたという成果が出ています。タブレットの機能を使えば、正答率や進度などのデータをその都度取得できるので、学力を評価するテストは不要になります。私はこうしたAI型タブレット教材が義務教育の現場にも普及していくと考えています。新たな教材の出現によって、学習が効率化され、定期テストがなくなれば、子供たちに自分たちの未来を考える余裕が生まれるのです」

未来想像WEBマガジン
AI型タブレット教材で数学を教えている様子

この提言は決して非現実的なものではありません。実際、文部科学省は、2019年6月に、2025年までに小中学生に「1人1台」、パソコンやタブレット端末を支給し、学校のICT環境を整えるための計画を公表しています。
神野さんが描く未来像はこうです。

タブレット教材による授業の個別最適化

取得したデータによる能力評価の再定義

教材のさらなるカスタマイズ

横並びの定期テストの廃止

生徒一人ひとりの個別学習計画の立案

一斉試験に依らない新しい大学入試


もちろん、教材が変われば、学校教育が変わるわけではありません。現場の教員にもアップデートが求められます。

未来想像WEBマガジン
コーチとして生徒に伴走するのがこれからの教員の役割

「未来の教室では、現在の授業にあたるものをタブレット上のAIが行うことになります。人間の教員はコーチとして、生徒一人ひとりと同じ目線でアドバイスを行うことが仕事になると思っています。私が本当に問題だと思っているのは、今の小中学生が忙しすぎることです。これでは、能動的に学ぶ力を養う時間がありません。英語も数学もAI先生に任せて、人間の先生は子供たちの興味・関心を刺激し、将来を考えるためのコーチに徹するべきなのです」

学校の選択肢がもっと増えるべき

未来の教育を考えるとき、学校という選択肢がもっと増えるべきだというのが神野さんの持論です。例えば、「N高」として知られる角川ドワンゴ学園N高等学校では、インターネットを使って自宅にいながら、プログラミングからファッションデザイン、農業まで幅広い選択科目を受講することができます。ここで興味ある分野を発見し、高校卒業資格を取得した生徒たちの多くは、難関大学への進学を実現しています。今後は、公立か私立かの二択ではなく、留学なども含めたさらに幅広い進学先が提示されるようになるのかもしれません。

Windows95が発売になったのは1995年。あれから25年後、インターネット社会が現在のような状況になると誰が予想できたでしょう? 変化が加速する現代社会において、10年後、20年後を見通すことは、ますます難しくなるのは間違いありません。ならば、既存の常識にとらわれない教育機関がどんどん登場し、子供たちの選択肢が増えるのは、ある意味必然とい えるでしょう。

未来を生き抜くために不可欠な「極める力」

「教材や教育機関などの枠組みからお話ししてしまいましたが、最も大切なのは、子供たちに未来の社会で何をしたいか考えさせることです。親は子供の能動的である力を奪ってはいけない。『これがしたい!』という思いを大切に育むことで、未来を生き抜くために不可欠な『極める力』が身につきます。これからのAI時代は、好きなことを極めて、世の中に還元する仕組みをつくっていける人が価値を生み出します。人に言われたことだけやっていても最先端にはたどり着けませんよね? それでは、結局AIに負けてしまいます。ゲームでもスポーツでもいい。『極める力』が必ず未来を拓いてくれます。そのために重要なのが、最初に申し上げた『圧倒的能動思考』です。AI型教材は、能動的に学ぶ力を身につける未来の教育をテクノロジーでサポートするツールなのです」

未来想像WEBマガジン
大切なのはあくまでも子供たちが能動的に学ぶ力を育むこと

これからの時代、AIやロボットなどを使いこなすテクノロジーの基礎知識は不可欠です。小学校からAI型教材に親しみ、英語やプログラミング言語を自在に操る子供も増えていくでしょう。しかし、AI型教材によって、身につけるべき本質的な力は、「これがしたい」「これを極めたい」と思う能動的な学びの姿勢だということは、しっかり頭に入れておくべきでしょう。

偏差値偏重のステレオタイプな考え方を捨て、未来の教育として何が正しいのか親子で一緒に探求し続けることが、今後さらに重要になりそうです。

この人に聞きました
GB0089_05
株式会社COMPASS ファウンダー
神野 元基さん


1985年、北海道生まれ。慶應義塾大学総合政策学部在籍中から起業家として活動。2010年、アメリカ・シリコンバレーでIT企業を起業した際に、2045年に起こる「シンギュラリティ」という概念に触れ、教育の道を志す。2012年より学習塾COMPASSを設立、地域No.1学習塾に成長させる。2015年、世界初となる人工知能型教材Qubenaを開発。同年、AI先生が教える塾「Qubenaアカデミー」を設立。2016年、日経コンピューター「ミライITアワード2016教育部門」にてグランプリを獲得。2019年より中央教育審議会委員。著書に、『人工知能時代を生き抜く子どもの育て方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。
ライタープロフィール
丸茂 健一
丸茂 健一
編集者・ライター。1973年生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、旅行雑誌編集部勤務を経て、広告制作会社で教育系・企業系の媒体制作を手がける。2010年に独立し、株式会社ミニマルを設立。ビジネス全般、大学教育、海外旅行の取材が多い。

丸茂 健一の記事一覧はこちら

RECOMMEND
オススメ情報

RANKING
ランキング