M2M(マシン・ツー・マシン)とは

「M2M(マシン・ツー・マシン:Machine to Machine)」は文字通り、マシン(Machine)からマシン(Machine)へ(to)相互にデータを通信する仕組みです。まずはその概要を解説していきます。
デバイス同士で情報をやりとりするM2M

M2Mでは、マシン(デバイス)間で通信し、デバイス同士が互いに管理・制御し合います。
デバイス間の通信は人手を介さずに自動的に行われ、正確かつリアルタイムな制御をデバイス同士で完結します。 M2Mの基本的なシステムを構成するためには、次のようなデバイスやソフトウェアが必要となります。
【M2Mデバイス】
状態を感知するセンサー・デバイスを動作させるアクチュエータ・通信機能を搭載したデバイス
【M2Mアプリケーション】
データの測定・アクチュエータのコントロール・データ転送などを行う
加えて、各デバイスの情報をクラウドシステムへ収集したり、各機器への指示・制御をしたりする場合は、インターネット環境も必要になります。
M2Mが注目を集めている理由
近年脚光を浴びているM2Mですが、実は、1990年代半ばに商用インターネットが登場するよりも前から存在していました。
当時は無線通信環境が未発達だったこともあり、自動販売機の在庫管理機能やガス・水道メーターの異常検知機能など、産業用機器の遠隔監視システムとして限定的に利用されてきました。一方、ユビキタス(いつでもどこでもインターネットにアクセスできること)社会を支える基盤技術の一つとして、M2Mが注目を集めるようになりました。
背景には、次のような技術の向上があります。
【センシング技術の向上】
センシング技術(センサー=感知器などを使用して様々な情報を計測・数値化する技術)が向上し、M2Mマシンに組み込まれるセンサーとして、小型かつ高性能で安価な製品が簡単に入手できるようになりました。センサーの小型化で、様々なデバイスにセンサーを組み込めるようになっています。
【通信技術の向上】
通信技術が向上し、通信モジュールの価格が下落してコスト面での懸念が解消に向かっています。また、小電力で信頼性の高い通信を実現するLPWA(Low Power Wireless Access)の技術が進歩したことにより、従来に比べてセンサーネットワークを簡単かつ安価に構築できるようになっています。
IoT(Internet of Things)との違いは?

IoT(Internet of Things)は、通信機能を持つ様々なモノ・デバイスと人がインターネットを通してつながる仕組みです。
一方、M2Mは必ずしもインターネットにつながっている必要はなく、機械と機械が直接通信する場合も含まれます。
M2Mでやり取りされる情報は、基本的にM2Mのシステム内で保存されるものであり、保存された情報が一般的なネットワークに出ていくとは限りません。
また、M2MはIoTでネットワークにつながるモノの一つでもあります。M2MがモノとしてIoTに組み込まれているとき、IoTはM2Mでやり取りされている情報をインターネットを通して収集できるようになります。
身近にもあるM2M(マシン・ツー・マシン)の活用事例

M2Mの概念を利用した製品やサービスは、意外と身近なところで私達の生活を支えています。M2Mの活用事例にはどのようなものがあるのでしょうか。
自動運転システム
近い将来、普及率が高まるといわれている自動運転システムは、M2Mの仕組みがふんだんに活用されています。自動運転システムでは、カメラやセンサーが車外の状況に関するデータを取得、データを車両の運転システムが受けて車両を稼働させます。
例えば、運転中に道路に人が飛び出してきた場合、センサーが人を感知すると同時に、ブレーキをかけるよう運転システムへと指令を出します。
大型機器の保守
工場内の大型機器が故障した場合、従来の人の手による点検では、機器に不具合が発生するたびに工場が点検を依頼、保守担当者が依頼ごとに訪問する必要がありました。
しかし、M2Mを活用して機器同士で通信させれば、生産ライン上の不具合を検知して自動停止することも可能になります。また、工場内のすべての機器の状況を一括で、かつ遠隔から監視するシステムを構築することもでき、保守担当者が工場へ訪問する回数を減らすといった効率化が期待できます。
IT時代のさらに先を行く、機械×機械の連携
総務省は「平成27年版情報通信白書」の中で「2030年の未来像―ICTが創る未来のまち・ひと・しごと」(外部サイト)という資料を公開しています。
2030年にはM2Mを活用した次のような未来が到来すると予測しています。
例えば、「建物(構造物)の駆体にセンサーを取り付ければ、地震のときに被害状況を把握できる」ような活用例です。
ただし、M2Mを活用した地震時の被害状況の把握という未来を実現するために、課題となっているのがセンサーの耐久性です。近い将来、温度・湿度・照度・加速度・磁気など様々なセンサーの耐久性が高まれば、M2Mを活用した被害状況把握の仕組みが実用化されるとしています。
また、2030年には、地方の街づくりにもM2Mが活用されると予想されています。白書では「地方の街づくりは現状把握から始める必要があるが、現状のデモグラフィックデータや経済データに加えて、M2Mを利用することによりインフラの状況(橋の数、水道の距離・設置年数、道路の状況等)を把握することが可能になり、街づくりに活かせるようになる」とされています。
橋や道路などあらゆるインフラ設備にセンサーを設置し、M2Mで相互通信することで、遠隔地から地方インフラの現状把握ができる未来が到来すると予想されています。
まとめ

IoTとの比較や事例紹介を交えながら、M2M(マシン・ツー・マシン)の仕組みを紹介してきました。M2Mは新しい概念かのように思われがちですが、30年近く前から私達の身近にある機器や機械に組み込まれてきました。そしてさらに今、M2Mによる「機械×機械の連携」が技術の進歩を経て、新たな製品やサービスを生み出そうとしています。
今後、意外なところにM2Mの仕組みが組み込まれていくのかもしれません。
ライタープロフィール

テクニカルライター。埼玉大学工学部機械工学科卒業。
大手IT企業のマーケティング部門にて、テクニカルライティング・技術翻訳・DTP業務に20年以上従事したのち独立。
現在は一般書籍からWeb記事まで媒体を問わず様々な記事を寄稿している。
近藤 真理の記事一覧はこちら