進化する学校給食 受け継ぐ食育時代 その先へ

進化する学校給食 受け継ぐ食育時代 その先へ

進化する学校給食 受け継ぐ食育時代 その先へ

近年、食育という言葉を聞く機会も増えてきましたが、食育は食事のバランスを整えるためだけのものではありません。学校給食にも導入されている「食育」。そんな食育の現在と未来を考えていきます。

給食は食育にとって欠かせない存在

給食は食育にとって欠かせない存在

食育という言葉が広く知られるようになったきっかけの一つは食育基本法です。
子供たちへの食育を行う上での取り組みを推進するための法律で、食育の方向性を示すための7つの基本理念と33の条文から成り立っています。
食に関する感謝の念や食料の大切さなどへの理解を深め、日本の伝統的な食文化や生産プロセスなどを伝えるための指針などを国や公共団体が伝えることを義務化するものです。
これによって、日本でも食育という言葉がよりいっそう注目を集めるようになりました。学校給食においては、子供たちが将来必要な社会性や協調性を学べる時間であり、私たち大人にとっても様々な気づきを与えてくれる時間にもなっています。

手洗いや身支度、配膳、後片付けを行うことで、子供たちは集団生活を体得します。その中で助け合いや譲り合いといった協調の精神も学べます。

先生は食器の扱い方や箸の使い方、食事のマナーや集団生活のルールを指導することができます。また、誰かのために働くことや、感謝の気持ちを持つ大切さなどを教え伝えることができるでしょう。

様々な体験が食育につながる

多くの学校では特別メニューを設けて、その地域ならではの食材を用いた郷土食を提供しています。学校によっては子供たちがトマトやキュウリなどの農作物を栽培し、その大変さを学びます。野菜の旬がいつかを知るよいきっかけにもなるでしょう。栄養士や調理員の協力で、収穫した食材が給食メニューとして登場することもあります。自分たちで作った野菜を食べるのは格別です。自然と感謝の気持ちが生まれます。地元農家の協力で、田植え体験などを実施している学校もあります。

このような経験は、親子や家族の対話を深めることや、地産地消の大切さ、日本の食文化や地域理解にも役立っていると言えます。

こうした背景からも、給食は大切な食育の時間と捉えることができます。そのため、子供自身も含めて給食に関わるすべての人が、楽しく食事ができる環境づくりを心がけたいものです。

給食の歴史〜はじまりから現代まで〜

給食の歴史〜はじまりから現代まで〜

日本で初めて学校給食が誕生したのは1889年。山形県の私立小学校で、貧困児童を対象におにぎりや鮭、漬物といった献立が提供されました。
その後、国内の一部の地域で給食という制度が広まっていき、1920年代には文部省(当時)より「小学校児童の衛生に関する件」という訓令が届けられ、学校給食が奨励されるようになりました。
ただ、この時点では全国すべての学校で給食が提供されていたわけではありません。

給食が全国的になったのは戦後から

給食制度が大きな転換期を迎えるのは、第二次世界大戦後の1940年代後半以降、特に全国的に給食の実施体制が整うようになる1954年の学校給食法制定からになります。当時は十分な食料もなかったため現在ほど品数もなく、アメリカから支給された「ララ物資」と呼ばれる食料資源を用いて作られたコッペパンや脱脂粉乳がベースとなり、副菜として魚のフライや千切りキャベツなどが添えられている形が一般的だったとされています。

現在の給食に近くなった1970年代以降

1976年になると、これまで給食の主食を支えていた小麦に加えてお米が組み込まれるようになりました。
これによって給食メニューの幅は大きく広がることとなり、現代の給食に近い形ができあがりました。
1996年には、腸管出血性大腸菌O-157による食中毒事件が発生したことをきっかけに給食に対する衛生管理の意識が高まり、翌1997年には学校給食衛生管理の基準が定められました。
さらに2005年に制定された食育基本法を受けて食育推進基本計画が実施されると、地域社会と協力した地産地消への取り組みや朝食の欠食率の減少など、具体的な数値目標を定めた動きが加速します。こうした時代の流れを受けて、食育を意識した現代の給食にたどり着いたのです。

食育の現在とこれから

食育の現在とこれから

食を取り巻く状況は刻一刻と変化しており、私たちはより自発的に食育について考えていく必要があります。続いては、食育の現状を整理しつつ、未来の食事事情の変化により、食育がどのようになっていくかといったことについて考えていきます。

現代における食育の考え方

最近では経済的事情から、母親も仕事を持つ家庭が増えてきました。時間をかけて料理を作ることができない親にとって便利なのが中食の利用です。

スーパーには、すぐに食べられるお惣菜やレトルト食品、揚げ物などの冷凍食品が並んでいます。宅配ピザやデリバリー弁当も簡単に手に入ります。見た目が鮮やかで美味しそうなものが多いのですが、こうした中食のほとんどは油をたくさん使用していたり、塩分や糖分も高いものが多く、特に味覚の形成途中の子供にとっては、あまりおすすめできるものではありません。また、中食ばかりでは、好きなものだけを食べてしまう偏った食事になりがちで、肥満や生活習慣病を引き起こす要因にもなりかねません。

特に最近は、子供の偏食が問題視されています。3~6歳児の親を対象にした静岡県のアンケート調査では、親の食育への関心のなさと偏食との関連が指摘されています。
子供が偏食になる要因として、食事の時間がバラバラだったり、親が主食、主菜、副菜を揃えることをあまり気にしていなかったり、食品の種類を増やすことを心がけていなかったり、親子で料理を作る経験がないことなどが挙げられています。

出典:JSTAGE幼児の偏食と生活環境との関連(外部サイト)

このことから親の時間的・精神的余裕のなさが子供の偏食につながっていると推察できます。大人が食育への関心を持つことが、子供の偏食を防ぐ第一歩なのかもしれません。
今はインターネットで簡単に情報を収集でき、食育について学ぶ場所もたくさん用意されています。忙しい環境だからこそ、私たちは自分事として食育に関心を持ち、積極的に食環境を変えていくことが求められているのではないでしょうか。

未来の食事と給食事情

私たちの食環境は、決して豊かなものとは言えないのが現状です。見栄えのよい食品が増えても、安全性などの心配をしなくてはいけません。土壌汚染による野菜や果物への影響、海洋汚染による魚や貝などへの影響も懸念材料です。また地球温暖化や世界的な人口増加などによって、食糧問題は今後さらに深刻になると予想されます。今は手軽に購入できる肉や魚が、将来は食べられなくなることも十分考えられます。

今はまだ一般的ではない食材が、将来の給食に使用されていることは容易に想像がつきます。私たちはこの先起こりうるこうした食糧問題についても理解をする努力をし、考えていく必要があるのです。

給食の最新動向とこれからの食育

給食の最新動向とこれからの食育

フランスでは、2022年までに給食に使用する食材の約50%をオーガニックまたは現地で収穫された食材にすることを目標としています。食に対する国の意識の高さを感じることができます。こうした他国の食育事情を知ることも、今後の日本の食育には必要になってくるのではないでしょうか。

日本の給食業界でも、少しずつ改革が進んでいます。例えば、食品を急速冷凍して細菌や微生物の繁殖を防ぐクックチルの導入です。これは安全性を確保するためだけではありません。調理したものを最大5日程保存できることで、運搬費や人件費の削減が実現します。計画的に行うことで食材の廃棄も減らすことができます。もし全国にクックチルの導入が広がれば、どれだけの食品ロスを防ぐことができるでしょうか。

給食における食育は、関わるすべての人が、自分たちが毎日食べたり作ったりしている食事や食環境に関心を持つことが重要です。食材を作っている人も、給食メニューを考える人も作る人も、学校の先生も家族もそして子供たち自身も。

日本の社会全体を見渡すと食に対する意識が徐々に高まりつつあるように感じられますが、一つの家庭、そして一人の人間が自分事として考えられるようにしていく必要があります。

食育の行く末を左右するのは、私たち大人の在り方

私たちは、どれだけ食の未来と向き合うことができるのでしょうか。

食に関わる問題は山積みです。食品の廃棄問題、環境汚染問題、前述した子供の偏食、食品偽造、遺伝子組み換え食品問題など。
私たちにできること。それはいま目の前で起きている事実を受け入れ理解し、未来の食卓はどうあってほしいのかを考えてみることではないでしょうか。そこから様々な疑問が浮かんでくるはずです。

なぜ日本のイチゴはこんなに甘いのだろう、なぜ冬のトマトは値段が高いのだろう。遺伝子組み換えって何だろう。
そんな小さな疑問を持つことこそが、食の未来に向き合う、ということなのです。
これからの食育、そして未来の食卓は、こういった私たち一人ひとりが持つ「考える力」、そして「行動する力」次第で大きく変わっていくことでしょう。

【参考】
文部科学省資料 食育の推進に向けて(外部サイト)
全国学校給食会連合会 学校給食の歴史 (外部サイト)
文部科学省 食育って何?(外部サイト)
春夏秋凍 クックチルとは?さまざまな課題を解決!【メリット・デメリット】(外部サイト)

ライタープロフィール
Ryogo
Ryogo
立命館大学経営学部を卒業後、メーカー勤務を経てライターとして独立。現在は、パスタ専門レシピサイト「美男パスタ」の運営や企業のレシピ開発、商品PR、食に関する執筆活動などを中心に精力的な活動を続ける。Instagram上で食に関するインフルエンサーとしても活躍中。

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