未来は脱プラスチックの世界へ。植物由来への転換

未来は脱プラスチックの世界へ。植物由来への転換

未来は脱プラスチックの世界へ。植物由来への転換

海外と比べ、環境問題への対策が不十分とされる日本ですが、2019年に原田義昭環境大臣(当時)が、「レジ袋の無料配布を廃止する」と発表し、日本も脱プラスチックに向けて動き始めています。脱プラスチック化の流れについて考えてみましょう。

「グレタ効果」 何も行動しない大人たちに衝撃を与えた少女の行動

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脱プラスチック、すなわち「脱プラ」の動きが加速しています。
脱プラの動きは、プラスチックゴミによる海洋汚染が深刻化していることが背景にあります。脱プラは環境問題に敏感なEU(欧州連合)が先行していたのですが、世界の環境汚染では問題国とされていた中国も、2018年から廃プラ輸入禁止措置を実施しています。このあたりから世界はようやく脱プラに踏み出し始めたといえそうです。

環境問題への取り組みを加速させるインパクトを世界に与えたのは、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさん(当時16歳)の行動です。グレタさんは、2019年9月の「国連気候行動サミット」に出席するためにヨットで大西洋を横断し、環境問題に関して行動しない大人たちを激しく非難しました。圧倒的な存在感を示して世界に環境問題に対する取り組みの緊急性を訴えた「グレタ・トゥーンベリ効果」といわれる衝撃は、とても大きなものでした。

プラスチック製袋廃止で、手提げ用紙袋が主役の座に

プラスチック製袋廃止で、手提げ用紙袋が主役の座に

日本でも企業ベースで脱プラに踏み出すという動きがスタートしていました。とりわけ東京・銀座などのお洒落な街に店舗を置く企業がいち早く脱プラに踏み込んでいます。

早かったのはアパレルの世界的企業H&M(ヘネス&マウリッツ 本社:スウェーデン)。
H&Mジャパンは2018年12月にプラスチック製袋を廃止して手提げ用紙袋に切り替えました。しかも紙袋は有料化(約20円・2020年2月現在)して、顧客にエコバッグ携帯のショッピングをアピールしました。H&Mは結果として地球環境問題に対応したライフスタイルを提案したとみられます。

2019年4月に東京・銀座にオープンした無印良品銀座は、原則としてプラスチック製袋を廃止し、手提げ用紙袋を採用しました。コットン製エコバッグを店頭に並べて購入を促し、ショッピングに使用してもらうことも顧客に提案してます。また、売り場では商品を吊り下げているフックをプラスチック製から紙製に切り替える方針も打ち出しました。

日本の場合、取り組めば一気に全体が変わっていくトレンドがみられます。無印良品銀座のような首都圏のファッションリーダーがプラスチック製袋を廃止して紙袋を採用したことは、今後の動向に影響を持つことになります。

無印良品銀座などの動きに続く格好で、コンビニエンスストアではミニストップがレジ袋の有料化に名乗りを上げました。ドラッグストア大手・ウエルシアHDもプラスチック製袋有料化、そして紙袋への切り替えを行うと表明。化粧品業界では既にファンケルなど有力企業が紙袋に転換すると発表しています。

紙袋と地球環境のサステナビリティ(持続可能性)との調和

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脱プラの当面の主役は手提げ用紙袋です。脱プラの受け皿として紙袋が一気に主役の座に躍り出ています。実際のところ紙製品企業は、百貨店の閉店・退店などで紙袋の売上が低迷していましたが、一転して最近では需要が大きく戻ってきています。

一方でこの現状には懸念点も。紙製品はもちろん自然由来ですが、それゆえに森林資源の保全という問題も抱えています。紙製品メーカーは、FSC(フォーレスト・スチュワードシップ・カウンシル)認証を取得して森林保全に配慮しています。それでも紙製品に需要が過剰に集中すれば、森林資源にマイナスの影響を及ぼすというリスクにも目配りしておかなければなりません。

紙袋はプラスチック製袋に比べるとコスト面で割高です。紙袋の最終的な顧客である企業・店舗などは、紙袋のコスト負担という“経営リスク”も考えておく必要があります。今後、紙袋のコスト負担がさらに増加するようなら、H&Mのように紙袋を有料化して、顧客に一部を負担してもらうという経営オプションも考えられます。紙袋を有料化するのは、企業と顧客が紙袋コストを折半し、ともに負担する(シェリング)ということです。しかし、仮に紙袋を10~20円で有料化しても、提供する企業・店舗側はそれでも“持ち出し”となります。

紙袋有料化は、顧客にエコバッグ携帯を促進する側面があります。エコバッグ携帯があたり前になれば、森林保全という地球環境との調和にプラスの作用となります。地球環境のサステナビリティ(持続可能性)からみて、一歩前進の動きといえるかもしれません。

「紙化」攻勢と“地球にやさしいプラスチック”の反撃

「紙化」攻勢と“地球にやさしいプラスチック”の反撃

2020年を起点に本格化するといわれているのが「紙化」です。スーパー、コンビニなどで使われている食品トレー、容器などを軒並み紙製品に切り替える動きが顕在化するとみられています。例えば、コンビニ弁当などに使われているプラスチック容器を紙製品に替えるといったことです。

紙製品メーカーは、この新しいマーケットを虎視眈々と狙っています。需要は相当に広範囲なものであると考えられます。紙製品メーカーは大きなビジネスチャンスと判断しているわけです。

一方、プラスチックのほうも負けてはいられません。このままでは生き残れませんから、生分解性プラスチックなどのバイオプラスチックで対抗するとみられます。バイオプラスチックとは、微生物によって分解され自然界に融合・回帰できるプラスチックです。いわば“地球にやさしいプラスチック”であり、この新型プラスチックで「紙化」の攻勢にストップをかけようとしています。

プラスチックは、安価で造形性に優れ、しかも耐久性があり、ありとあらゆるモノに用途拡大をなしとげてきた歴史があります。プラスチックは鉄やセラミックなどの産業分野まで代替を実現しており、半導体関連などを含めてハイテク製品でもプラスチックが席巻してきました。例えば、半導体パッケージ容器はセラミックからプラスチックに代替するような変化を遂げてきました。まさに技術革新の権化だったといえます。

まとめ

脱プラの動きは、日本のプラスチック業界を直撃しますが、過去がそうであったように技術革新で生き残るための努力や進化が不可欠と思われ、勢いに乗っている「紙化」とのビジネス面での攻勢は避けられないとみられます。
プラスチックは、自らを地球環境のサステナビリティと調和・適合できる製品開発を実現することが、これからの命題といえるのではないでしょうか。

ライタープロフィール
小倉 正男
経済ジャーナリスト
小倉 正男

早稲田大学法学部卒。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリストへ。「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。2012年から日本インタビュー新聞社のサイトに「小倉正男の経済コラム」を連載。

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