信用スコアとは?

「信用スコア」は個人の信用力を数値化した指標で、AIによって算出されます。利用者の学歴や勤務先、年収、住居、決済サービスの利用実績などを始めとした多彩な情報を元にスコアが算出されます。
日本ではまだそれほどなじみがありませんが、海外の一部では既に定着しているサービスです。例えば、米国では「FICOスコア」が1990年代から大手信用調査機関で採用され、長く利用されています。また、中国では、大手IT企業・アリババの関連企業が提供する「芝麻信用(セサミクレジット)」が広く普及し、生活の様々な場面で利用されています。
信用スコアの仕組みを簡単に説明すると、
1.様々な要素から個人の信用スコアを算出
2.信用スコアサービスの運営企業が、提携企業にスコアを提供
3.提携企業がサービス提供時の指標としてスコアを利用
という流れになります。
例えば中国の芝麻信用の場合、社会的地位や学歴、金融資産などに基づく支払い能力、運営元の系列企業が提供する決済サービスやネットショップの利用履歴、さらにはSNSの交友関係といった情報を基にして利用者の信用スコアが算出され、そのスコアが提携企業に提供されます。
提携企業はクレジットカードや融資といった金融関係だけでなく、ホテルや不動産、レンタカー、結婚サービスなど多岐にわたり、その利用者の信用度を測る指標として活用し使われています。
スコアに応じて様々な特典を受けられることがメリット

信用スコアが高い利用者は、ローンを組むなどの金融サービス利用時のメリットに加え、日々の生活でも様々なメリットを得られるようになります。
例えば前述の中国の芝麻信用では、スコアの高いユーザーはシェアサイクルやレンタカーの保証金の免除や、コンビニなどで提供されている傘のレンタルサービスの無料利用、ホテル予約時に必要な保証金が不要になるといった特典を受けることが可能です。さらに、一部の国では個人観光ビザの申請手続きを簡略化できるなどのメリットもあります。
また、信用スコアを利用することで、ローンや融資の審査にかかる時間が短縮され、待たずに審査結果を得られるようになる点もメリットでしょう。これは、審査を実施する金融機関などにとっても、業務効率化や省人化の面で利点となります。
信用スコアが抱える課題

信用スコアを使うことでメリットが得られるとはいえ、自身の様々な個人情報が集約され、個人の信用力が数字で可視化されてしまうことから、「なんとなく怖い」というイメージを抱く方もいらっしゃるかもしれません。
信用スコアが重視され過ぎる状況になると、それによって新たな格差が生まれるリスクもあります。実際に中国では、所得が低いためにスコアを上げることのできない利用者に過剰な不利益が生じるなどの課題も浮き彫りになっています。
日本国内での普及にあたっては、信用スコアがひとり歩きしてしまうことを回避し、ユーザーが安心して利用できる環境を整えることが不可欠になりそうです。
日本国内での信用スコアの普及状況
海外では既に普及が進んでいる信用スコアですが、日本国内でも様々な信用スコアサービスがスタートしています。例えばLINE Creditによる「LINE Score」、みずほ銀行とソフトバンクによる「J.Score」、NTTドコモによる「ドコモ レンディングプラットフォーム」、Yahoo! Japanによる「Yahoo!スコア」などがあり、今後もこの流れは加速していくと見られています。
仕組みを理解したうえで活用することが大切

現在の日本では、日々の生活のなかで信用スコアを利用する機会はさほど多くありません。しかし、米国や中国での普及状況をみると、日本でも今後、信用スコアが広く利用されるようになっていく可能性は十分に考えられます。
信用スコアの利用にあたっては、まずはそのサービスについてしっかり理解することが重要です。
スコアの算出には自分のどの情報が使われているのか、スコアはどんな企業に提供されているのかといったことを事前にきちんと確認し、納得したうえで利用することがユーザー側の心構えとして必要になるでしょう。
仕組みを理解したうえで上手に利用すれば、様々な場面でメリットを享受できる有用なサービスとして活用できるはずです。
ライタープロフィール

企業広報誌の編集を経て、フリーのライター・編集者に。IT・デジタル、ビジネス分野を中心に、書籍や雑誌、Web媒体での執筆・編集、取材などに携わる。
著書に『今からササッとはじめるLINE/Twitter/Instagram/Facebook』(秀和システム)、『今すぐ使えるかんたん FC2ブログ 超入門』(技術評論社)。所有資格に、情報セキュリティマネジメント、ウェブ解析士など。株式会社ウレルブン代表。
酒井 麻里子の記事一覧はこちら