一歩進んだユニークな休暇制度 その狙いは?

一歩進んだユニークな休暇制度 その狙いは?

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    本松 俊之
一歩進んだユニークな休暇制度 その狙いは?

話題の「働き方改革」。日本ではまだまだ道半ばという企業が多いようですが、一部では、生産性向上や業務効率化などを狙った独自の休暇制度を導入する企業も増えています。今回はそのユニークさで注目を集める企業の休暇制度についてご紹介します。

有給休暇の取得は、まだまだ低調

厚生労働省が発表した2018年の就労条件総合調査によると、2017年の1年間に企業が付与した年次有給休暇(有給)は繰越日数を除き、労働者1人平均で18.2日。そのうち労働者が取得した日数は9.3日で、有給取得率は51.1%となっています。同省も引用して紹介している総合旅行サイト、 エクスペディア・ジャパンの「世界19ヵ国 有給休暇・国際比較調査2018」によると、「日本人の有給休暇の取得率は未だ低く、世界19ヵ国の中で3年連続最下位の50%という結果」になっています。

【出典】
厚生労働省 平成30年就労条件総合調査

エクスペディア・ジャパン

一般的な日本企業は「働き方改革」の前に、まずは有給や産前産後休暇、育児・介護休暇といった「法定休暇」の消化率自体を上げることが必要なようです。

「浮世離れ休暇」と「山ごもり休暇」

「浮世離れ休暇」と「山ごもり休暇」

一方で、会社が独自に法定外休暇を制度化する、一歩進んだ企業も現れています。

マーケティングの支援を行う株式会社トライバルメディアハウスは、2013年から「浮世離れ休暇」制度を導入しました。「浮世離れ休暇」は、勤続満5年を迎えたスタッフに1ヵ月の連続有給休暇を付与する制度のこと。同社CHRO(最高人事責任者)の前川浩樹氏によると、「1ヵ月もの間、仕事から離れることは、休暇を取る本人にとっても貴重な経験ですが、同じチームで働く人にとってもその不在をカバーすることで成長のきっかけにもなります」とのこと。

連続して1ヵ月の休暇とは羨ましい限りですが、取得したスタッフからは好評で、この休暇を目標にして仕事に励んでいるという方も多いそうです。取引先からも「浮世離れ休暇」はネーミングも含め好意的な意見が寄せられ、「採用活動でもスタッフファーストをめざす会社の方針が良く分かる制度だと興味を持ってもらうことも多い」(前川さん)と、会社側も手応えを感じています。

大阪市北区に本社を置く、マーケティングを中心としたソフトウェア開発企業の株式会社イルグルムは、2011年に「山ごもり休暇制度」を導入しました。1年間に1度、2回の土日に挟まれた9日間の連続休暇を義務づけ、休暇期間中は電話やメールでのコンタクトを禁止するもので、導入以来、取得率は100%、つまり全社員が取得しているそうです。

同社コーポレートコミュニケーション室室長の金ナリさんによると、山ごもり休暇導入の背景には、「社員の心身のリフレッシュをはかることと、業務の標準化を進めたいという思いがあった」とのこと。制度の導入後、社員の休みに関する意識が変化し、山ごもり休暇以外の休暇の取得が促進されるようになっただけでなく、業務についても「『山ごもり』前後の引き継ぎで業務をチーム内で共有することによって、標準化も進みました」と金さん。経営の強い意思で進められ、全員の取得を義務付けている点が制度定着の秘訣かも知れません。

採用希望者の応募者増にも寄与

採用希望者の応募者増にも寄与

アルバイト・パートを中心とした採用コンサルティング業を行う株式会社ツナグ・ソリューションズでは、2009年から自己啓発を目的に、年1回、最高連続5日間まで休暇を取ることができる「勉強休暇」制度を導入しました。

休暇に加えて勉強費が10万円を限度に支給され、「瀬戸内国際芸術祭に参加して知見を深めたい」、「担当する企業の店舗で職業体験をしたい」といった従業員の「やってみたい」がこの制度で実現しています。リフレッシュと同時に、前向きな気持になれそうな制度ですが、その他にも「Love休暇」、「理美容半休」、「カルチャー&エンタメ半休」など気になるネーミングの特別休暇も用意されています。広報担当の川田ゆきえさんは「こうした制度の導入のベースには『休むことも仕事』という会社の考え方があります」と話します。

休暇の取得後は社内のイントラネット上でのレポートが義務付けられているため、セクションを超えたコミュニケーションが生まれていて、それが日常的な業務の共有にもつながっているほか、採用希望の応募者増にも寄与しているそうです。

続いて岐阜県輪之内町に本社を置く、電設資材大手の未来工業株式会社には、休日に挟まれた平日は休日になるという「オセロ休暇制度」があります。総合企画部の杉原創紀さんによると、制度の導入のきっかけは製造業が3K職場といわれ、新卒学生から敬遠されていたことでした。同社では平成元年頃から「年間休日140日」の制度とオセロ休暇制度を導入しました。

また、そのほかにも創業時から「育児休業3年」、「5年毎の海外旅行」、「営業ノルマなし」などの大胆な改革を順次進めたところ、各種メディアで紹介される機会が急増。オセロ休暇や、こうしたユニークな制度が紹介されることで知名度が上がり、社員が自分の会社に誇りを持てるようになっただけでなく、採用募集にも大きな効果が表れています。杉原さんは「もともと良いものは柔軟に受け入れるという風土がある会社です。良い発想から良い製品が生まれ、自由な時間で社員は人生を楽しめる。こうしたサイクルが今後も続いていくよう努力していきます」と話していました。カレンダーをチェックすることが楽しみになる制度ですね。

明確な戦略や意識が導入の背景に

明確な戦略や意識が導入の背景に

グローバル製薬企業の日本法人グラクソ・スミスクライン(GSK)株式会社には、毎年1日有給休暇を取り、自ら選択した地域コミュニティ・プロジェクトに対してボランティア活動を行う「Orange day」という休暇制度があります。

CSRマネージャーの吉岡英夫さんによると、この制度は2009年から世界中のGSKグループで始まったそうです。GSKでは、ビジネスとCSR(企業の社会的責任)は「どちらも私たちの助けを必要としている人々に貢献するという点では同じ」(吉岡さん)。ボランティア活動の経験は業務にも生かされ、社外からの信頼向上にもつながっているとのこと。

2019年1月にはこうした活動が、東京ボランティア・市民活動センターが主催する「企業ボランティア・アワード」で大賞を受賞しました。吉岡さんによると新卒の採用でも「Orange Day」への学生の関心は高く、「入社後に社会貢献の社内プロジェクトに参加して力を発揮する社員もいる」とのこと。同社では「Orange day」に限らず業務のパフォーマンスを上げるために戦略的に休憩することを推奨しています。

ユニークな休暇制度を導入する企業を紹介してきましたが、いずれの企業の取り組みも、従業員がきちんと休むことが生産性向上につながり、最終的には企業自体の成長につながることを正しく認識したうえで、明確な戦略のもとに実施されていることが良く分かります。今後はどんなユニークな休暇制度が生まれ、どのように企業や社会、そして日本人の働き方を変えていくのか。引き続き、注目していきたいところです。

ライタープロフィール

本松 俊之

本松 俊之
大学卒業後、大手新聞社勤務を経て、ロイター・ニュース・アンド・メディア・ジャパン株式会社にてアドソリューション・クリエイターとして勤務(2013年6月~2019年2月)。現在はフリーランスライターとして幅広い分野で執筆中。