【エコストア創設者インタビュー】サステナブルから「リジェネレーション」へ

【エコストア創設者インタビュー】サステナブルから「リジェネレーション」へ

  • サムネイル: 小竹 美沙
    ライター
    小竹 美沙
【エコストア創設者インタビュー】サステナブルから「リジェネレーション」へ

有害/不要な化学物質を一切使わない洗剤やボディケア製品で世界的な人気を誇るニュージーランド生まれのブランド「エコストア」。今回は来日中のエコストア創設者、マルコム・ランズ氏にインタビューを行いました。ランズ氏が見据える未来とは・・・?

躍進を続けるエコストア

躍進を続けるエコストア

エコストアの人気商品(左からランドリーリキッド、ベビーオイル、ディッシュリキッド)

「エコストア」は1993年にマルコム・ランズとメラニー・ランズ夫妻によってニュージーランドで創設されたブランドです。「排水を汚さず、自然を侵襲しない」洗濯洗剤や食器洗剤の開発からスタートし、今ではボディウォッシュやリップバームなどのボディケアアイテムを含め、ライフスタイルのあらゆるシーンにエコを取り入れられる様々なプロダクトを展開、本国ニュージーランドだけでなく全世界にファンを増やし続けています。日本でもセレクトショップやデパートなどでよく見かけるようになりました。

エコストアの製品は成分の95%以上が植物・ミネラル由来であり、その容器は石油に依存しないサトウキビ由来のバイオプラスチック(シュガープラスチック)を使用しています。また、製造工場はいずれもCO2排出に関するニュージーランドの最高規格基準「エンバイロ・マーク」のダイアモンドレベルをクリア。ブランド創設から25年、製造から消費に至るすべてにおいて「サステナブルサイクル」(持続可能なサイクル)を追及し続けるエコストアは、ニュージーランド最大級のマーケティング会社Colmar Brunton が行うBetter Futures Reportにおいて5年連続「ニュージーランドNo.1サスティナブルブランド」の称号を得ています。

エコストアが世界中の人に愛される理由は何だと思いますか?

―エコストアが世界中の人に愛される理由は何だと思いますか?

マルコム:私たちは、地球のために優しいものをつくりながら、かつ値段も他の製品とできる限り同じであるように心がけています。石油由来のケミカルなものが、肌に24時間触れているとどうなるでしょうか?かねてから『パラベンと乳ガンの関連性』が指摘されていますが、一般的なプロダクトに入っているアイテムでも、肌に長時間触れるとどのような影響を及ぼすか?ということを、私たちは案じています。

エコストアがスタートした当初は『地球のために優しいものを作る』がポリシーでしたが、予期せずして、お客さまから『エコストアの製品を使ってからアトピーや喘息が良くなった』というお手紙や電話をいただくことが相次ぎました※。地球に優しいものは、結果として人間の肌にとっても優しいものだ!と気付いたんです。だから今でも、「何か一つだけ、エコストアの商品を使うとしたら何が良いですか?」と聞かれたら、衣類用洗剤を勧めるようにしています。なぜなら、アンダーウェア、シーツ、パジャマは、24時間アナタの肌に触れているから!裸のとき以外は、ね(笑)。衣類に残った洗剤は、経皮吸収(皮膚を通じて吸収)されるので、できるだけ体に優しいものを選んだほうが良いと思います。
※個人の感想です

エコストアを生んだエコビレッジとは?

―エコストアの製品は「エコビレッジ」という場所で生まれたと聞いています。どんな場所なのですか?

エコストアを生んだエコビレッジとは?

ミュージシャン時代のマルコム

マルコム:私は高校卒業後、しばらくの間、ロックンロールのミュージシャンをしていました。ミュージシャンを引退後は、2年ほどかけて世界中を旅しました。キューウィーズ(ニュージーランド人)は、よくこんな長旅にでるんですよ。帰国後はアートカウンセラーの仕事をしながら、オーガニック菜園を始めました。そして1986年に自然に育つ植物や野生の動物だけで自給自足生活を送るパーマカルチャー・コミュニティ『エコビレッジ』を立ち上げました。

エコストアの製品は「エコビレッジ」という場所で生まれたと聞いています。どんな場所なのですか?

エコビレッジでの食事

―パーマカルチャーとは、どのようなものなのでしょうか?

マルコム:パーマカルチャーとは、パーマネント(永続性)と農業(アグリカルチャー)を掛け合わせた造語で、1970年代にオーストラリアで確立された農業のあり方を指す言葉です。パーマカルチャーは、「Friends with nature(自然と友好的に)」「No waste in nature(自然にムダはない)」「Learn from nature(自然から学ぶ)」という3つの考え方に基づいており、これはエコビレッジのポリシーでもあります。自然環境を自然の摂理に従ってそのまま活かしながら、農業に取り組むのです。実は、日本人にも早くからパーマカルチャーの大切さを説いた人がいました。「自然農法 わら一本の革命」(春秋社刊)の著者・福岡 正信さんです。彼はパーマカルチャーという言葉こそ使っていませんが、彼が唱える自然農法とパーマカルチャーは根本的に同じものだと思います。

―そのエコビレッジで、エコストアの製品が生まれたきっかけは何だったのですか?

そのエコビレッジで、エコストアの製品が生まれたきっかけは何だったのですか?

エコビレッジ

マルコム:エコビレッジでは近くの国立公園から引いた水を生活用水に使っています。世界でも最もきれいな生活用水の一つだと思いますよ。でも、あるとき、「ちょっとまて!おかしいぞ」と気付いたんです。このきれいな水は、私たちが使ったあとには汚れた水になってしまう、つまり綺麗な水を綺麗なままで自然に戻せていないことに気付き、愕然としました。そこで、自宅の倉庫で、自然の素材だけを使って洗剤を手作りすることにしたのです。そして、エコビレッジに住む仲間にも、この手作り洗剤を使ってもらうことにしたのです。するとエコビレッジの生活排水は、菜園の肥料にできるほどきれいになったんです。これが口コミで評判を呼び、私たちの手作り洗剤をほしいという人からの問い合わせが相次いだため、1993年に「エコストア」を創設したのです。

―エコビレッジの現状は?

マルコム:今も18世帯が暮らしています。私も週の半分くらいはオークランドで、残りはエコビレッジで暮らしています。

エコビレッジは、とてもサクセスフルなコミュニティだと思います。フランスなどから訪れる人もいますし、ボランティアで働いている人もいて、とてもインターナショナルなコミュニティに成長しました。暮らしている人は平均して35人くらいかな。夏休みには親戚や友人たちが訪れるので、100名くらいに増えることもあります。

エコビレッジの現状は?

エコビレッジにて

サステナビリティは退屈!?これからは「Regeneration」の時代

―最近は、サステナビリティという言葉を日本でもよく耳にするようになりました。マルコムさんにとってサステナブルな生き方とは?

マルコム:実は「サステナビリティ」という言葉はニュージーランドではそれほど使われていないんですよ。Sustainって、結局は「現状維持」という意味でしょう?なんだか発想として退屈ですよね(笑)。だからでしょうか、ここ1年ほどはアメリカやオーストラリアではSustainよりも「Regeneration」(革新する、再生する)というキーワードのほうが、盛り上がってきているように感じます。現状維持より、革新とか再生のほうが刺激的ですもんね。「今よりヒドくしない」というニュアンスのサステナビリティに比べて、「より良くする」という意味のRegenerationのほうが素敵じゃないですか?You see the difference? It is coming!(違いが分かりますか?それはもう次のムーブメントなんですよ!)

ー最後に、マルコムさんにとって「美」とは何でしょうか?

マルコム:答えはシンプルです!美とはその人のキャラクターであり、他の人をケアできる心のことです。

ーマルコムさん、ありがとうございました!

まとめ

マルコムさんのお話を聞いて、他のオーガニックコスメブランドの中にも、バイオダイナミック農法(有機農法の一種。月の満ち欠けに合わせて種まきを行うなど、植物の力を最大限に引き出すことを期待した農法)で原材料を育てているブランドがあることを思い出しました。

彼らに共通しているのは、自然に敬意を払ってものづくりをしているという点。そして、生産性の高さや効率だけではなく、環境に配慮した(マルコムさんの言葉を借りれば)「Regenerate」なアプローチです。これからは、アイテムを選ぶとき、パッケージの可愛さ、香り、価格、といった従来型の購買基準に、「ブランドの環境への取り組み」という視点を加えてみるのもいいかもしれません。

この人に聞きました

マルコム・ランズ Malcolm Rands

マルコム・ランズ Malcolm Rands
30年以上に渡って、ニュージーランドの環境保護に関するアクティビストとして活躍し続ける起業家、思想家でありエコストアの創始者。現在はエコストアの社長の座をパブロ・クラウス氏へ譲り渡し、CEO(チーフエシカルオフィサー)としてその思想を体現する存在。また同時にLittle Bird Organicsの共同代表、そして都市部にもエコビレッジのようなサステナブルコミュニティを創設することを目的としたNPO団体Fairground Foundation代表を務めている。

ライタープロフィール

小竹 美沙

小竹 美沙
ライター。1984年生まれ。女性誌やウェブマガジンにて、ナチュラル&オーガニック&サステナブルなコト、モノ、人びとについて取材&発信中。
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